「…どうして、なんでも加瀬さんに
話さなきゃいけないんですか」
「なんでもじゃねぇ。
なんであいつといるかだけ
きいてんの」
「理由言わなきゃいけないんですか?」
「おう。言え」
「なんで!?私たち恋人でも
なんでもないのに!」
北川さんが急に大きな声を出したから、
俺は手を離して一歩下がった。
「恋人じゃなくても、
俺たち普通の隣人の関係じゃねぇだろ?」
「なんで…」
「何が?」
「なんで、加瀬さんは自分のこと
何も話してくれないのに、
私ばっかり話さなきゃいけないの?」
「は?俺だってなんでも話してるじゃん」
「話してない!」
そこまで言うと、北川さんは
目に涙を浮かべて、
走り去って行った。
「はぁ…もう、何なんだよ…」
北川さんが何を抱えているのか
全く分からない。
今は追いかける気にもならなくて、
俺は時間をあけてから、自分の家に戻った。



