そして、辺りは暗かったけど、
車のドアが開く時につく車内のライトで
俺は運転席にいた奴の顔をはっきりと見ることができた。
は?あいつじゃん。
あの老けた男。
北川さんは、ドアを閉め、
エントランスの方へ歩き出す。
軽自動車は俺の前をゆっくりと通り過ぎて行った。
「北川さん!」
俺は彼女の肩を掴んだ。
「なんで、あいつといんの?
あんな最低な野郎と」
「…あ、加瀬さん。
……」
答えないのかよ。
「あいつにとって北川さんは
遊びだったんだって!
なんでわかんねぇの?
ただの体目的なのに」
「……」
「まだ、あんな奴と連絡とってたんだ?」
イライラする。
多分、この出来事が先週起きていたら、
そうでもなかったかもしれない。
でも、最近、北川さんとのデートがなくなり、
避けられたり、素っ気ない態度をとられたり、
上手くいかなくて落ち込んでるのに、
あんな最低な男の方へなびいた北川さんに
イライラする。
「……」
「なぁ、答えろよ」



