ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


俺は少し悩んでから電話マークを押した。


「もしもし」

よかった。出た。

「電話して大丈夫だった?」
「あー…まぁ、はい」


北川さんの声のトーンは確かにいつもより低い。
長くならないようにしないと。

「体調どう?俺、看病しにいってい?」
「すみません、今、実家なんです」

そういえば、実家が近いって言ってたな。

「そっか。あ、ケーキ、
用意してくれてたって…」
「あー…はい」
「……」
「……」

なんで用意してくれたのか、
北川さんが理由を教えてくれるのを待ったけど、
彼女を何も言わなかった。


「代金、俺が払うよ。
次会ったとき」
「い、いいです」
「じゃ、せめて半分」
「ほんとにいいんです!
ごめんなさい、もう切ります」
「待って北川さん、あのさ…」


ポロン…


そこで電話が切れて、
俺はしばらくその場に立ち尽くした。