「……すみません、私、
野球のルール
全然分からないですし…。
それに、
加瀬さんと野球観戦したい人なんて
山ほどいると思いますよ」
「俺は北川さんと行きたいんだ。
ルールなら俺が教えるから」
「あー…でも、
それだと試合に集中できないし…」


そんなことはないと思うけどな。


「あ、そういえば、田中主任、
確か野球好きでしたよね?」


俺はコピー機の前で
新入社員の山本君を引き留めている
ツンツン頭野郎に目をやった。


「確かに」

田中さんとナイター…
嫌じゃないけど、
想像しただけでしんどい。



ただでさえ平日に
釣りの話を嫌というほど
聞かされるのに、
休日まで魚のマシンガントークを
受け止めるのはキツい。


そして、早く山本君を
釣りの話から解放してやれ。

もう、聞いてないぞ。




「とにかく、
私よりふさわしい人がいるはずなので、
その人にゆずります!では!」