「お…お姫様とか…
私、そんなたいそうな身分じゃないです。
メイドクラスです。お風呂掃除とか、
皿洗い担当です」
「そうなの?」
「加瀬さんはもちろん王子様ですけど」
「じゃあ、俺たちは愛し合ってるけど、
身分の違いで、
結婚を許されない二人だ」
「そうですね…
でも、王子様は執事に変装して、
たまに厨房とかに会いに来てくれるんですよ」
「密会か」
何の話だ?とお互い笑い合いながら、
席に着く。
「じゃあ、シャンパンあけるか」
「す、すごい!そんなものまで
用意してくださったんですね!」
「北川さんとクリスマスだから」
「うれしい…です…」
北川さんは、かわいいとつぶやきながら
テーブルナプキンのリボンをほどいた。
乾杯し、今日何していたのか北川さんに聞きながら、
俺はバゲットをきりわける。
「身支度に数時間かかりまして…」
「気合入れてくれたんだ?」
「…はい……だって、加瀬さんは
完璧ですし…」
「まあね」
「ふふ」
「でも、北川さんも完璧じゃん。いつも」
「そんなこと…ないですけど…
加瀬さんに言われたら嬉しいです…」
北川さんはちょっと顔を赤くして、
ナプキンを膝にかけた。



