どうも、噂の悪女でございます


(どの口が言うのかしら)

 これまでマーガレットがどれだけ努力してきたか、そのほんのひとかけらすら知らないくせに。正確に言えば、周りがどんなに諭しても『聖女なのだから辛くても努力するのは当然だ』と言って知ろうともしなかった。

「全く思いません。だって、聖女なのだから辛くても努力するは当然だと仰ったのは殿下ではありませんか。ご自分で望んだことなのだから、ご自分で尻拭いしてくださいませ」

 マーガレットは冷ややかにそう言う。

「なんて女だ。見損なったぞ!」

 イアン王子がバシンと目の前のテーブルを叩き、マーガレットを睨み付ける。叩いた拍子に紅茶が零れ、テーブルに茶色い水たまりを作った。

「どうとでも仰ればいいわ。だって、わたくしは〝噂の悪女〟なのでしょう?」

 にこりと微笑むと、マーガレットは優雅に立ち上がりその場をあとにする。
 呆然と立ち尽くすイアン王子を、振り返ることはなかった。