「今わたくしがやっているこの作業も、本来であれば彼女の仕事です。あなたとメアリーの婚約のお祝いに対するお礼状を母親であるわたくしが書くなど、通常であれば考えられないわ。あなた、ご自分でやったらどう?」
「私は最近執務が増えて──」
「増えていません。マーガレットがあなたの分までやっていたのです」
王妃はぴしゃりとそう言い切ると、「下がりなさい」と言う。
イアン王子は閉ざされる扉を呆然と見つめることしかできなかった。
◇ ◇ ◇
マーガレットが王宮に呼び出されたのは、それから暫くしたのちのことだった。
(一体なんの用事かしら?)
婚約していた期間ですら、自分を王宮に呼ぶことなど滅多になかったのに。
(面倒なことでなければいいけれど)
マーガレットは小さく息を吐く。そして、その悪い予感は見事に的中した。
「西の外れの森に魔物が現れたんだ──」
マーガレットと対面したイアン王子は、青い顔をして開口一番にそう言った。



