どうも、噂の悪女でございます

 イアン王子が王妃様の元に到着したとき、王妃様は自身の部屋で何かを書いているところだった。前触れなく突然現れたイアン王子に、形のよい眉が僅かに寄る。

「突然、一体何事です」
「母上。メアリーが聖女の役務に疲弊し、疲れ果てております。ご助力ください」

 王妃の部屋に向かったイアン王子は、母親であり聖女でもある王妃にそう告げる。王妃は、扇で口元を隠すと目を眇めた。

「イアン」
「はい」
「この国には、聖女はふたりいます。王妃であるわたくしと、将来の王太子妃です」
「…………」
「マーガレットはこれまで、本当によくやってくれました。それに対して、あの子はマーガレットのやっていたことの十分の一もやっていないわ。それに、王室に嫁ぐための花嫁教育も『疲れている』の一点張りで全く進んでいない」
「それはメアリーが、まだ慣れていないせいでっ!」

 イアン王子は咄嗟に反論する。

「お黙りなさい」

 王妃の低い声が部屋に響く。