その17
麻衣



バグジーさんは口にしてたタバコを地面に叩きつけた

で、足で火をこすり消しながら、私に迫った

「…お前、”それ”をどうして知ってる?」

「あのさ、あんたが少刑戻りの雇われで、砂垣の敵を潰す刺客ってことは、相和会のアンテナに引っかかって耳に入ってた。握力が化け物並みってのもね。だけど、あんたの内面が女だってのは、今感じ取ったんだ。私はカンが鋭いんだよね。で、”それ”を確信した上で聞いたんだよ」

「フン…、お前の言ってること、全部その通りだ。否定はしない。そこで、こっちからはひとつずつ尋ねよう。返答次第ではお互い汗をかくことになるから、あしからずだ。まず、私の倒すべき敵がお前の友人だとしてだ…。今私の握力を試して、どうする?」

「一応、あんたの相手は女だ。ハンデって訳ではないが、あんたの実力のほどはある程度伝えたいってね。私、今の女性勢力をこれまで散々かき回してきちゃったから…。私が知り得た敵の最低限の情報はね…。ただ、それだけ。現在の私は完全な部外者だから、変な勘違いはしないで」

「よし、どうせだ。たっぷり私の恐ろしさ、教えてやれ。次にだ、相和会が私の情報を掴むのはわかるが、それがだ…、なんでお前みたいな”子供”に伝わるんだ」

コドモ?

勘弁してよっての…

もうすぐ結婚が控えてるんだぞ!


...


「あんたは地元の人間じゃないから知らないだろうど、最初の自己紹介のとおり、俗名はこの夏に他界した相馬豹一会長の血縁ってことで名乗ってた。まあ、その関係ね。くわしくは砂ちゃんから聞いて。その辺、全部知ってるから、アイツ」

「ふーん、つくづく変な野郎だな…。まあいい。それで、私が性同一性障害だと知ってどうするってんだ?砂垣に告げるとかか?」

「誰にも言うつもりはないよ。ただ、いずれ、ゆっくり聞きたいなって気はある。私もあんたが今捉えている私とは、別の自分を持ってるんで。ああ、二重人格とは違うわよ」

「…」

「今日、あなたに会って言いたかったことは、私の”お願い”よ。正面からガツンと闘ってくれって、そういうお願い。何しろ、己の気持ちに従って。雇われでも、それに甘えないでほしい。あとは、私がそう言っていたって、砂ちゃんに伝えてくれれば、解説してくれる」

「わかった…。機会があったら、また話をしよう」

「了解。またね…」

よし…

広島に発つ前に済ませたわ