その15
麻衣



「ばーぐじーさん!」

幹線道路沿いの大型ゲームセンター、ルーカスの駐車場で、”標的”を発見だ

私はその大柄の”男”の元へ歩み寄った

「誰だ、お前?」

「ああ、私、本郷麻衣っていう元女子高生ですけど、もうすぐ倉橋麻衣になるんです。あと、俗名で相馬豹子ってのも名乗ってます」

「そんないくつも名前聞いたって、意味ないだろ。何か用かよ」

「あの…、あなたが近く戦う相手、私の知り合いなんですよ。なので、”挨拶”させてもらいます」

タバコを吹かしながら、”何だコイツ”って顔してる、コイツ…


...



「変な女だな、お前。じゃあ、さっさと済ませろや。体力使う方の”アイサツ”でも構わないぜ」

バグちゃんはニヤリともせず、そう、ぶっきらぼうな言葉をタバコの煙と一緒に吐き出した

「まあ、”体力”使うほどのことじゃないんですけどね。握手して欲しいんです。では…」

そう言って、私は右手を差し出した

「…」

少し間があったが、無愛想でおしゃれなバグちゃんは、私の右手を”軽く”握った

よし、行ってやれ!


...



ギューッ!

私はコイツの右手を思いっきり握ってやった

それこそ地面から足を離して、ジャンプするくらいの勢いをつけて…

あれ?

握り返してこないや…

私は、今度は両膝を曲げ、その踏ん張り力を右掌に集中した

”どうだ、来い!”

すると、相手はようやく”反応”した

”ギャー”

口には出さなかったが、頭の中ではそう絶叫してた


...



私は飛び上がった

「わー、痛えー!」

今度は大きな声を上げた

2、3度跳ね上がった私を見て、バグちゃんはやっと手を離してくれたわ

いやぁ…、こりゃ、想像以上に凄い握力だわ

「…お前、俺が握力強いのを知ってて、試したのか?」

「バグジーさん…、知ってるのはそれだけじゃないよ」

「は…?他に何か知ってるってのか、俺のこと…」

「あんた、女でしょ?」

「…」


...



「もちろん、戸籍上の性別は男なんだろうけど…。ええと…、性同一性なんとかって…」

ハハハ…、コイツ、顔色変わったわ