その13
砂垣



うん?

どうやら終わったらしいな…

「砂垣さん、そろそろタイムリミットです!」

後方の”整理”部隊がこちらへ走ってきた

「ああ、ちょうどあちらさんもケリがついたようだしな。大場と蘇我はここで、整理係の”歯止め”頼むわ。俺はあっち、立ち合ってくるよ」

「了解!」

俺はバグジーの元へ駆けて行った


...



「バグジー、ちょうどリミットぴったりだわ。じき、ギャラリーが来るかも知れんから、急いでくれ」

「ああ。じゃあ、悪いが、俺の車のトランクからタオル持ってきてくれるか。この後の話は、野郎どもの車の中でやる。アンタも立ちあってくれ」

「よし、今持ってこよう」

ふふっ…、どうやらコイツ、かなりのきれい好きだな(笑)


...



俺は卸したてと見えるタオルを2本手に、”先方”の車の後部席に入った

そしてとなりに掛けているバグジーへタオルを手渡した

「悦子、これで血を拭え。俺の車を汚したくないんで、ここで話すぞ…」

バグジーは運転席の男と助手席の女に念を押していた

「すでに倍払いの同意はとれてる。後は金の受け取り方法、および時期だ。いいか、今から言う3つのうちから選択しろ」

ここに及んで、先方の二人はすっかりおとなしくなって、ただ頷くだけだ

バグジーの提示した3通りは、いずれも逃げ道を塞いだ抜け目のないものだった

結局二人は、この足で銀行へ行って、指定口座への振り込みを行った後、その振り込み控えをここへ持ち帰るという段取りを選んだ

その間、男の運転免許証とキャッシュカード以外の二人の所持品すべてと、さらに車の車検証をこっちが預かるという訳だ

「じゃあ、安全運転で行って来い。車検証ないんだから、交通違反で捕まんないようにな」

バグジーはこう言って二人を”お見送り”した


...



「砂垣、まずは確認だ。さっきので、”用”は足りたか?」

「ああ、あれで十分、アンタの力はわかったさ」

「そうか。まあ、俺もかえって助かったわ。そっちの見張りがしっかりだったんで、遠慮なくやれた。そういう”手配”はさすが、手慣れたもんだな」

「まあな…」

はは…、この類は俺達のおはこだよ

下の駐車場入り口では、こっちの手の者が”誘導”でここの現場には入ってこない”工夫”を打っていたからね

大体は無許可でのAV撮影か、アクションシーンのリハとか言ってね

他の駐車スペースへ回っしゃうんだ

ちなみに今日の現場は、暴行シーンの”予行練習”ってことにしといたわ

万一、さっきの惨たらしい暴行現場を見られても、フィクションってことになるから

まあ、バグジーさんのは、どう見ても”モノホン”だったが…(苦笑)