病める時も、健やかなる時も、君と

「自分勝手でごめんなさい。でも、私がいたら夏樹さんは不幸になる。私、お医者さんに勧められて遺伝子検査を受けたの。その結果はリー・フラウメニ症候群だった……!」

リー・フラウメニ症候群とは、遺伝子の変化により様々な種類のがんを発症しやすくなる病気だ。一般より若い年齢でがんを発症するリスクが高く、三十歳から四十歳までに約五十%、七十歳までに八十%とされている。

「私の体はがんに何回も侵されて、その度に夏樹さんに迷惑がかかる!こんな私よりも、もっと健康な人と結婚した方が夏樹さんは幸せだって思ったの!だからーーー」

「俺の幸せ、勝手に決めないでよ!!」

絵梨花の言葉を遮り、夏樹が大声で叫ぶように言う。絵梨花の言葉が喉の奥に引っ込んだ。夏樹は抱き締める力を強め、言う。

「俺が結婚したい、一生そばにいたい、そう思えたのは絵梨花さんだよ。その代わりは世界中どこを探したっていないんだ。こんなにどうしようもなく愛してるのも、離したくないって思うのも、あなただけだ!」