秋季大会も終わった次の日曜日…


いつも通り私たちは船岡山公園でトレーニングをしていた。


最初の園内五周も彼とほとんど同じペースで走れるようになったいた。





広場でストレッチをしていると彼が話しかけてきた。


樋口「惜しかったな…」


茜「うん、でも決勝の内容はあっちが明らかに上だったよ……やっぱ橘は強いわ」


私が決勝で当たった橘高校は私立高校で特にテニスとバレーは力を入れている女子校だ。


樋口「今年度はあと近畿選抜だけだな、大きな試合は…」


茜「うん」


樋口「勝ち上がれば必ずまた当たるだろ」


茜「うん、次は絶対に負けない!」


樋口「次はお前のこと研究してくる相手も多いぞ!」


茜「そんなやつらぶっ倒してやるよ!♪樋口くんとこうやって毎週トレーニングしてるし」


樋口「…………」


茜「え、どうしたの?」


樋口「何かさ、その………」


茜「何?」


樋口「呼び方!何とかなんねーのか?」


茜「え?何とかって……?」


樋口「『勇次』でいいよ!オレも『茜』て呼んでやるから!」


茜「何よそれ!?自分が呼んでもらいたいだけじゃん?」


樋口「違げーよ!」


茜「いいよ、呼んであげるよ『勇次』!!」


と、言うと彼は背中を向け…


樋口「チッ!言わなきゃよかったよ!」


と、言った。


茜「アハハ、自分で言い出して怒ってやんの!♪」


樋口「うるせっ!次ラリーすっぞ、茜!」


茜「はーい、はぃ♪」




そして広場でラリーをしていると…


「あ、ほらいたいた!♪」


と、声がしたので見ると理佐と由依と美波がやってきた。


茜「え、どうしたの?」


理佐「お祝いだよ」


美波「ほら、ケーキ持ってきた♪由依ん家で三人で作ったんだ♪」


茜「うそー!!?」


由依「優勝は逃したけど準優勝のお祝いと、樋口くんの優勝のお祝いとね♪」


樋口「え、オレも?」


理佐「そうだよ、どっちかって言うと茜は準優勝で悔しいだろうから樋口くんの優勝のほうがメインかな?笑」


茜「そうだよ!悔しいよ!!」


茜「でも…………嬉しい♪ありがとう♪」


美波「ちょっと休憩して食べようよ♪ジュースも持ってきたし♡」


そして私たちは野外劇場のベンチで三人が作ってくれたケーキを食べた。


結局その日はそこでお喋り会になってしまってトレーニングは出来なかった。





陽が傾き始めると彼は、


樋口「オレそろそろ帰るわ」


と、言って立ち上がった。


理佐「ごめんねトレーニングの邪魔しちゃったね」


と、理佐が言うと…


樋口「あぁ、うん……まぁ大会終わったばっかだから……たまにはこんなのもいいかも」


と、言った。


そして理佐が続けた…


理佐「樋口くん、茜のことよろしくね♪」


樋口「え?あぁ、うん……そりゃまた一緒に優勝目指すよ」


理佐「うぅん、そう言う意味じゃなくって」


樋口「え?」


美波「もぉー!スポーツマンはそう言うとこ鈍いのか!?」


茜「ちょっとあんたたち何か勘違いしてんじゃないの!?」


由依「勘違いしてるのはどっちかな♪笑」


茜「ちょっともぉー!変なこと言わないで!!」


樋口「何かよくわかんねぇけど……ケーキありがとな、ごちそうさま」


と、言って彼は帰っていった。


美波「あーぁ、もうちょっといじりたかったなぁ〜」


茜「何言ってんのよ!勇次とはそんなんじゃないよ!」


三人「………♡」


理佐「『勇次』だって!♪」


由依「名前で呼び合ってんの?♪」


美波「キャーッ!!」


茜「ちょっと!そんなんじゃないって言ってるでしょ!!」


彼は帰っていったが、私はしばらくこの三人にいじられ放題であった……




第十八話へつづく…