あたしは、ショートパンツにTシャツ、カーディガンを合わせて、鏡の前に立った。

いいカンジ。


「お母さん!いっていきます!」
「気をつけてね〜!5時までには必ず帰るのよ!」
「はーい。」


外に出ると、涼しい風が吹く。

小説とかでは、主人公の気持ちと天気がよくリンクしているけど、現実では、関係ない。

あたしがいじめられて苦しもうが、悲しもうが、天気は一緒に悲しんではくれない。

あたしは、ひとりぼっち。


ふらりと足の向くままに歩く。

どこに行くかなんて知らない。

ただ、歩く。



あたしがやって来たのは、神社。

長い階段を登った先にある、薄暗い神社。

手頃な岩に腰掛ける。

名前の分からない鳥が(さえず)る。


ここには、あたししかいない。

あたしを痛めつける人、あたしを裏切る人はいない。

神様と、あたしだけの世界。


「ん〜ん。」


あたしは、大きく伸びをした。


「辛いな…月曜なんて来ないでほしい。」


思わず漏れた本音。

そうだ、あたしはとっくにイジメに負けていた。


強がって、毎日学校に行って、耐えていたけど。

抵抗したけど。

あたしの心は、完全に(むしば)まれていて。


「あは…あたしも、頑固だな…」


変な正義感だけで動いて。

あたしは、馬鹿だ。

神社は心が落ち着く。



心安らぐひとときを過ごしていた。

そこに————