あたしは、昇降口に立って、外を見つめた。

どうしようもない。

雨に打たれて帰るしかないのか。

あたしは靴を履き替えるために靴箱に手を伸ばした。

瞬間。



「ひぃぃ!!!」



思わず靴を落とす。

床に沢山の画鋲が散らばる。

心臓がバクバクする。

びっくりした。

もしも、あのまま靴を履いていたら…

想像してゾッとした。



『こんな子供っぽいイジメなんてくだらない。』

どこかの漫画か小説ではそういうクールなキャラのいじめられっ子がいるかもしれない。

だけど…

ツーッと頬に涙が流れる。


実際にやられると、想像以上に苦しいんだよ。


伏見くん。

伏見くんは、あれからあたしと話さなくなってしまった。


あたしが避けているのかもしれないけど…

麗華にいじめられるあたしなんて、惨めすぎて、伏見くんと顔を合わせられない。

こんな体も心もボロ布みたいなあたしは、伏見くんと話したくない。

心の隅でそう思っているのは事実だった。


「しょうがない……」


あたしは、呟いて、上履きを靴箱に入れる。


—ゴン。


……?

上履きが引っかかって上手く入らない。

なんで?

あたしは上履きを取り出し、靴箱の中を覗き込む。


私の視界に入ったものは、太い棒のようなものだった。


なんだろう。

あたしは、手でそれを掴んで取り出した。