「百合香、おはよう!!」

「おはよう、愛香!!」



いつも通りの日常が始まる。

昨日のことは、信じられない。

いや、信じたくない。

あたしが、あの人たちに目をつけられた?

そんなこと、あってほしくない。

昨日のことは、嘘であってほしい。



「愛香、どうしたの?」



知らず知らずのうちに怖い顔になってしまっていたのだろう。

百合香が心配そうにあたしの顔を覗き込む。


「あ、ううん。大丈夫だよ。」

「そう?何かあったら言ってね?あたしは、愛香の味方だから。」


百合香が微笑む。

あたしの心は、その笑顔に、溶かされてゆくようだった。



———そう、あたしには、百合香がいる。

優しい、親友の百合香が。

百合香はあたしを裏切らない。

あたしは、その根拠のない自信があった。

根拠がなくても、分かるんだ。

ずっと、築いてきた友情は、壊れない。



あたしは、百合香を信じている。




「ねえ、百合香。」

「ん?」

「百合香もさ、ずーっと、あたしのそばにいてね。」


まえに、百合香に言われた言葉を、返す。

百合香は、一瞬驚いたような顔をして、こちらを見たが、すぐに笑って言った。



「もちろんだよ。愛香は、あたしの親友だもん!」



頼もしい笑みだった。