【過去の思い出】



「こんにちは、白神麗華です。早く皆さんと仲良くなりたいです。よろしくお願いします。」



約5年前、あたしが小学6年生の時、彼女は転校してきた。



「あたしのお父さんは、会社の社長をやっています。お母さんは、とても優しいです。みんなとも、たくさんお話ししたいです。」



微笑みながら鈴のような声で言う少女。


ウェーブのかかったふわふわの茶色い髪の毛。

白い肌、クリッとした茶色い瞳。


教室からはざわめきが起きる。

あたしは、ただただ見惚れていた。

彼女の美しさに。



その頃の麗華姫の会社は、経営が鰻登りだった。

しかし、まだそこまで強い力を持つわけではなかったらしい。


でも、そんなことは関係なかった。


「会社の社長」


その言葉は、小学生のあたしたちにとっては、かなりのパワーワードだった。



この子とは、仲良くしていた方がいい。


あたしの心が、体が、そう叫んでいた。

あたしは迷わなかった。


彼女と一緒にいれば、いつか、いいことがある。

一種の勘だった。


こんなに心躍ることはなかった。




「麗華…ちゃん!あたし、彩綾(さあや)っていうの!!よろしくね!」




あたしは彼女の机に一番乗りで寄っていった。

にっこりと微笑むことも忘れなかった。