コンコンコン。


誰もいない病院の廊下にあたしのノック音が響く。

百合香の病室……ここであっているはず。



「はい。」



病室からその声が聞こえてきた瞬間。

あたしは懐かしさに襲われた。

百合香が入院してからまだ数週間しか経っていないけど…。

あたしにとっては、とても、とても懐かしい声だった。



「百合香…?」



あたしは、病室のドアを開く。



「愛香っ!!!」



ベッドの上には、懐かしいあの子が。

思っていたよりも元気そうで、羊毛フェルトの手芸なんかやっている。


百合香は、満面の笑みであたしに微笑んだ。

その笑顔を見ていると、自然とあたしの頬も緩んできて…。



「百合香ーーー!」



あたしは、百合香にフルで体当たりをした。



「ぎゃん!!愛香、愛香重い…!!」



百合香が笑いながらあたしの背中を叩く。



「あはは、これでも体重減ったんだよ。」



あたしは、眉を下げて言った。

ストレスで、食べ物を食べられなくなったんだ…。


百合香は何かを察したのだろう。

真顔になった。



「あのさ……、愛香、あの…。」



百合香は言いづらそうに言い淀む。




「分かってるよ、白神さんたちのことでしょ?」




百合香は泣きそうな顔になった。