「あたしは、鍵を壊していません。」



教室がザワッと揺れた。

佐藤が手で制す。



「あたし、見ました。白波さんが、鍵を壊している所。」



は…はぁ!!??

なに言っちゃってんの、こいつ!




「白波さん、なんか、物に当たっているみたいでした。あの…あたしが言っていいことか分からないんですが…。」




ぶーちゃんは佐藤の方をチラリと見る。

佐藤は頷いた。




「し、白波さんは…虐待を受けているんです。」



またもやみんながざわめく。



「あたし…、白波さんとは、昔結構仲の良い友達だったんです…。その時、白波さんの家庭事情を知って………。本当に辛い思いをしているんだな…と。」



え…ええ!?

あたしがぶーちゃんと友達!?

そんなの知らない!!

なんで…!?




「これ、昨日の白波さんの音声です。ダメだとは思っていたけど、白波さんのためと思って、録音しました…。」



ぶーちゃんがスマホで音声を流す。



『死ねっ!マジ死ねよっ!』



いつかのあたしの音声が流れる。

そして鈍い金属音。

でも、これ、昨日のあたしのものじゃない。

いつだったか…、ぶーちゃんをいじめていた時の声…。




「あたしの言うこと、信じてくれましたか…?あと、もう一つ…。白波さんは、鍵を持ち去っていました。きっと今も持っています。まだ、昨日のままなら…きっと、スカートの右のポケットに鍵は入っています。」