あたしは、駆け出した。

なんでなんでなんでなんで!!!

なんで、みんな、いじめられっ子に味方するの?

どうして、いじめっ子を責めるの?

おかしくない?


なんで?

チーターがガゼルを食っても何も言わないのに。

カマキリがバッタを食っても何も言わないのに。

上司の無理な要求も、何も言わずにやるのに。




あたしが、麗華姫にいじめられても、みんな知らん顔だったのに。




この世は、弱肉強食じゃないの?




人って、立場が自分より低ければ、誰だって見下すのに。

どうして、どうして、イジメはいけないの。

どうして、あたしが責められなくちゃいけないのよ…!?



「はぁはぁ…!」



何本もの狭い路地を滅茶苦茶な方向に走り、追ってくる人をまいた。

あたしは、肩で息をした。


その時、上(?)から、人が落ちてきた。

ん?

人って上からくることあるの?


落ちてきた人は綺麗に着地し、あたしと向き合った。




「一人レースお疲れ様。」




うちの高校の制服を着た女の子だった。

真っ黒の長い髪の毛をかきあげる。




「八神………!」




誰でもいいから助けて欲しかった。

あたしは八神にすがりついた。



「八神!八神…!あたしを、助けて!」



夜風の暗い瞳を覗き込んで言う。