「あれ?松本さんじゃん!」



皮肉を含んだ声で誰かが呼びかける。



「愛香…」

「大変だね、松本さん?」



こいつ…っ

あたしのこと煽ってんの?

なんなの、こいつは。

無性にムカついた。



「ふざけないでくれる?ぶーちゃんごときが!あたしは、あのくらい叩かれただけじゃ痛くも痒くもないっつーの!」

「きゃっ…」



あたしは愛香の襟元を掴んで揺さぶった。

右手で平手打ちをする。

でも、愛香は一声も発しなかった。

マジ、ムカつく!



「そんなことしちゃっていいの…?」



その時、愛香がニヤッと笑った。



「は?なんのこ……と……」




周りを見ればすぐに分かった。

集まった野次馬たち。

みんな一様にあたしにカメラを向けていて。



「うわ…マジじゃん。」

「聖理奈って、マジでこの子のこといじめてたんだ。」

「ひっど。」

「警察に言う?」




おじさんから、子持ちの主婦まで、いろいろな人があたしに冷たい目を向ける。

あたしに羨望の眼差しを向けていた女子高校生たちさえ、あたしを氷のような目で見つめる。




「い…いやっ……!!」