「お姉ちゃん…。」




聖香が廊下の奥から静かに歩いてくる。

聖香…

聖香は、あたしの妹。

あたしのことを一番よく知っている。

聖香だったら…



ワカッテクレルヨネ?




「せ、聖香ぁ…!おかしいと思わない?聖香は分かってくれるよね?あたしは間違っていないよね。お母さんもお父さんもおかしいよね?」




あたしは涙を流して聖香の顔を見る。

聖香は、澄んだ瞳で、あたしを見つめる。

聖香の唇が開く。




「お姉ちゃん…お姉ちゃんが、間違っている。」




頭を鈍器で殴られたようだった。

聖香の、静かで力強い声が頭の中で反響する。

ああ…どうして…!?

なんでみんな、狂っているの!?




「お姉ちゃん、あたしはお姉ちゃんを尊敬していた。…それなのに、なんで…っ!!」




パーンッ!!





大きな音が響く。

聖香の頬が赤く染まる。

聖香の右目から涙が一筋溢れた。



あたしの目からも涙が溢れる。



みんな、みんな分かってくれない。

最低。

あたしは、聖香の白い頬を叩いた右手を後ろに回す。




こんな、最低な家族なんて…

あたしのことを分かってくれない家族なんて…

狂っている家族なんて…



いらない。