さっきまで落ち着いていた心は、嘘のように砕け散ってしまった。


恐怖だけが体の中に残る。



「そんな屋上の淵にいて、どうしたの?もしかして、死ぬ気だった〜?」



ギクリとする。

あながち間違っていないかもしれない。




「でもぉ、そんなことしても無駄だよぉ。死ぬなら死ねば?あたしが手伝ってあげようか?」




麗華の手があたしの首に回る。

ぎりぎりと麗華の手が首を締め付ける。



「う……うぐ……が…」



気管が締まり、息が出来なくなる。

頭がくらくらする。

あたし…殺される…!



その時だった。



——ドンッ!!




あたしの首を絞めていた麗華が吹っ飛ぶ。


「な…!」



倒れた麗華がものすごい形相で睨む。

あたしは、呼吸できるようになり、咳き込む。

麗華に体当たりしたのは…



———百合香だった。




肩で息をしている。

足が震えている。


しかし、麗華を見つめる彼女の目は、今までで一番強い目をしていた。



「麗華姫、もうやめて!こんなこと、したらいけない!!」




百合香が掠れた声で叫ぶ。



「は…?」

「もう…あたし耐えられない!
イジメなんて、あたしにはできない…!」



百合香…!

百合香の顔に光が戻っていた。

どんなキッカケがあったのか分からないけど、百合香が麗華に逆襲した。