The previous night of the world revolution7~P.D.~

ルルシーは俺を止めようとしたが。

アイズは、やれやれといった風に肩を下ろした。

「俺がルレイアですよ。ルレイア・ティシェリー」

隠す必要はない。

俺に会いたいって言うなら、いくらでも会ってあげますよ。

俺のハーレム会員なら大歓喜でしょうね。

「…君が…」

ブロテは、不躾に俺をジロジロと見つめた。

そんなに見られたら、恥ずかしいですね。

男前で良かった。

「俺に、何かお話でも?」

わざわざ俺をご指名ということは、何か思うところがあるんだろう?

この際だから、俺に職質してくれても良いですよ。

「…成程。確かに…一癖も二癖もありそうだね」

それは心外だ。

俺はいつだって清らかな心を持ち、誰にでも素直で、そして謙虚な常識人だというのに。

俺ほど誠実な人間は、ルティス帝国広しと言えどもなかなかいませんよ?

すると。

ブロテは唐突に、検討外れなことを言い出した。

「君が『青薔薇連合会』を実質支配していると聞いた」

「…」

…は?

これには、傍らにいたルルシーとシュノさんもびっくり。

「帝国騎士団の団長を誑かして、ベルガモット王家の皇太子を人質に取って、『青薔薇連合会』に有利なように操ってると」

「…」

「あの噂は本当だったみたいだね。君なら、どんな悪どいことでもやりそうだよ。…そんな顔をしてる」

…えぇと。

…とりあえず、俺の顔をディスるのはやめてもらいたいですね。

これでも俺の顔は、ルティス帝国各地にいるルレイア・ハーレムの会員から絶賛されているくらいなので。

優秀なハーレム会員なら、最早俺の顔を見ただけで絶頂するとか何とか。

そうだというのに、俺が悪党顔だと?

この女、目の玉入ってるか?節穴なんじゃないのか。

それに、さっき妙なことを言ってなかったか?

オルタンスを誑かしただとか、ベルガモット王家の皇太子が何だとか…。

…誰のことだ?…ルーチェス?

「…何か勘違いしてない?ルレイアは、何も…」

アイズが、ブロテの誤解を解こうと口を開いたが。

しかしブロテは、アイズの弁解など聞かなかった。

くるりと身体の向きを変え、今度はシュノさんに向かい合った。

びくっ、とするシュノさん。

「君も?君も、『青薔薇連合会』の幹部なの?」

「…そ…そうだけど。それが何なの?」

動揺しながらも、弱みを見せたら負けるとばかりに、喧嘩腰で言葉を返していた。

「…まだ若い女の子じゃない、あなた」

「…え…」 

ブロテは憐れみを込めた顔で、シュノさんにそう言った。

…いや、まぁ。

確かにシュノさんは、若い女の子ですけども。

「どうしてこんなところにいるの?どうして『青薔薇連合会』なんかに入ってしまったの?」

「…それは…」 

「こんなところにいちゃ駄目だよ。君みたいなうら若い女の子が。今からでも遅くない。足を洗って、表社会で生きられるはずだよ」

「…!」

警戒しまくっていた相手に、突然お節介なことを言われ。

シュノさんは、思わず動揺してしまっていた。

…余計なお世話過ぎるな。