The previous night of the world revolution7~P.D.~

「…分かった。なら、私達も好きにさせてもらう。…皆、手筈通りに」

ブロテはそう言って、後ろにぞろぞろついてきた部下達に指示した。

フードの深い服を着て、黒いマスクで顔を隠した自警団員達は、自分の家のように我が物顔で踏み込んできた。

そして、容赦なく家探しを始めた。

その格好と言い、やってることと言い、空き巣みたいな連中だな。

はいはい、どうぞご勝手に。

好きにすれば良いとは言ったが、だからって、家探しされて嬉しいはずがない。

ブロテ達が見つけて喜ぶような、犯罪の「証拠」になるようなものは、何もないんですけど…。

「あなたは、『青薔薇連合会』の幹部?」

ブロテがアイズに尋ねた。

何だ。職質か?

「そうだよ」

答える義務はないはずだが、アイズは素直に頷いた。

何も隠すつもりはない、ということか。

アシュトーリアさん同様、アイズも潔い。

すると。

「じゃあ…君がルレイア・ティシェリー?」

…ん?

今、俺の名前呼ばなかった?

突然のこの質問には、アイズも驚いた。

「…違うよ。何でそう思うの?」

「『青薔薇連合会』には、ルレイア・ティシェリーという幹部がいると聞いていたから。君じゃないの?」

「私はルレイアじゃない」

「…そう」

…。

「…俺って、もしかして有名人?」

「…ある意味ではな」

傍らのルルシーに、こっそり尋ねてみると…そんな返事が返ってきた。

成程。人気者は困るな。

まさか、ポンコツ帝国自警団にまで名前が知れ渡っているとは…。

…そのとき。

「…?」

何者かの視線を感じて、くるりと振り向く。

灰色のフードを深く被った団員の一人が、一瞬だけ、睨むような視線を俺に向けていた。

…何だ、あれは。

俺が振り向くと同時に、そいつはぱっと視線を逸らし。

背中を向けて、家探し作業に戻った。

…俺のことを知ってたのだろうか?何処の誰か知らないが。

それとも、『青薔薇連合会』の一員というだけで、憎しみの対象だったか?

…あるいは…。

…いや、そんなことよりも。

今は、ブロテの質問に答えるのが先だな。

「それなら、ルレイアは何処?会わせてもらえないの?」

「ルレイアに会いたいの?何の為に?」

「彼に聞きたいことがあるからよ」

ほう。それはそれは。

やっぱり、人気者は困る。

俺のサインが欲しいのかもしれない。

「…」

アイズはともかく、ルルシーは警戒心丸出しだった。

ブロテの口から俺の名前が出てくるなり、ルルシーは臨戦態勢に入ってしまったようだった。

ルルシーの心配性、発動。

大丈夫ですって。

ルルシーは俺に目配せをして、黙っているように指示してきた。

何も言うな、黙っておけ、ってな。

ブロテが何を考えているか分からない以上、「俺がルレイアです」とわざわざ出ていくのは危険。

そう判断したんだろう、ルルシーは。心配性ですから。

…でも。

その藪に蛇が住んでいるかどうかは、棒で突っつき回してみないと分からないだろう?

「…俺をお呼びですか?」

「ばっ…!おまっ…!」

ルルシーの制止を振り切って、俺はブロテの前に出ていった。