The previous night of the world revolution7~P.D.~

いよいよ。

帝国自警団のリーダー、ブロテ・ルリシアスが、『青薔薇連合会』本部のエントランスに足を踏み入れた。

姿を見るのは初めてだが、何のことはない、何処にでもいそうな小娘だった。

こんな小娘が、帝国自警団のリーダーとは…。

しかし、腰に差したレイピアや、その油断のない立ち居振る舞いを見たところ。

どうやら、相当の手練であることは認めざるを得ない。

ふーん。意外と骨のある奴がいるんですね。

ブロテは恐れることなく、天下の『青薔薇連合会』本部に足を踏み入れ。

その場に立ち止まって、周囲をぐるりと見渡した。

…言っておくけど、罠の類はないぞ。

今のところ、俺達は帝国自警団と事を構えるつもりはないからな。

すると。

『アイ公、撃って良い?アリューシャが脳天ぶち抜いてやるよ』

ライフルのスコープから、こちらの様子を見ているアリューシャが。

うずうずした様子で、狙撃の許可を求めてきた。

アリューシャの手にかかれば、一瞬であの世行きでしょうね。

…でも。

「いや、その必要はないよ。そのまま待機して」

アイズには、帝国自警団のリーダーを暗殺する気はないようだった。

それが賢明だと思いますよ。

まぁ、ブロテがいきなり俺達に襲いかかってくるようなことがあったら、その限りではないが。

恐らく、それはないだろう。

勝てない相手に戦を挑むほど…そこまで馬鹿じゃないはずだ。さすがにな。

『ちぇっ…。分かったよ。でもなんかあったら撃つから』

「うん、そうして」

ひとまず、アリューシャ達はその場で待機。

いつでも動けるよう、準備だけはしておくことにして。

「…ようこそ、『青薔薇連合会』へ」

首領代理として、アイズレンシアはブロテに挨拶した。

口調は穏やかだったが、アイズの目はマフィアのそれだった。

常人であれば、その目を見るだけで腰を抜かすだろうが…。

「君は?…もしかして、『青薔薇連合会』のリーダー?」

ブロテは物怖じすることなく、アイズにそう尋ねた。

意外と骨があるじゃないか。

「リーダーではないけど、まぁ、首領の代理だと思ってくれて良い」

アイズはアシュトーリアさん公認の、次期首領ですからね。

「そう、代理…。首領本人は何処に?」

「今日はここにはいないよ」

「逃げたの?別に逃げなくても、取って食ったりしないのに」

自惚れるな、馬鹿め。

取って食われるのは、お前達の方だろう。

しかし、アイズは相変わらず涼しい顔をして、さらりと流した。

「さぁ、中にどうぞ。私達は逃げも隠れもしない。好きなだけ見ていって」

「…」
 
アイズの潔い態度に、ブロテは少し驚いたようだった。

まさか、ここまで「歓迎」されるとは思ってなかったか?

それとも、俺達が未練がましく、立ち入り調査を拒否するとでも思ったのだろうか。

そんなみっともないことをするくらいなら、そもそも立ち入り調査を受け入れたりするものか。

アシュトーリアさんの言う通り。

見たいものがあるなら、好きなだけ見ていけば良いのだ。好きなだけな。