The previous night of the world revolution7~P.D.~

事前通告をした、その翌日に訪ねてくるとは。

随分性急な話だが、しかしこれも、帝国自警団の策略だろう。

対策や隠蔽をする時間を与えず、俺達がボロを出すことを期待しているのだ。

全く小賢しい奴ら。

まぁ、でもアシュトーリアさんの言う通り。

見たいものがあるなら、どうぞ好きなように見ていけば良い。

今なら入場料無料ですよ。

マフィアの本部なんて、表社会の人間はなかなか見る機会がないだろうから。

どうぞどうぞ、好きなように見ていってください。お化け屋敷感覚で。

まぁ、帰り道は保証しませんけどね。

…すると。

『お、来たぞ』

インカムから、アリューシャの声が聞こえてきた。

帝国自警団の来訪に伴って、俺達は最大限の「おもてなし」の準備をした。

アリューシャはいつでも自警団の団長を狙えるよう、『青薔薇連合会』本部から少し離れた狙撃ポイントで待機している。

本来なら、アリューシャはもう寝てる時間なんですけどね。

こんな時間まで起きて、しかも働かされているというのに、アリューシャから不平不満はなかった。

それどころか、寝ぼけた声も聞こえない。

ライフルを持ったら、アリューシャは人が変わりますから。

今このとき、アリューシャ以上に頼りになる狙撃手はいない。

更に。

『こちらでも確認した』

『こっちからも見えますよ。元気そうで何より』

インカムから、ルリシヤとルーチェスの声も聞こえてきた。

この二人も、アリューシャ同様、『青薔薇連合会』本部から少し離れた位置で待機してもらっている。

ないとは思うが、帝国自警団が変な気を起こさないとも限らないからな。

何かあったら、彼らが帝国自警団の背後から忍び寄り、挟撃出来る体制を整えておいた。

…で、残る俺とルルシー、シュノさん、アイズの四人で…帝国自警団のお客様を「おもてなし」することになる。

万が一のことがあってはならないという配慮から、アシュトーリアさんは「おもてなし」には参加しない。

残念そうだったけど、アイズに止められてしまったのである。

皆、警戒に警戒を重ね、緊張した面持ちである。

シュノさんなんか、カチコチに固まっている。

…大丈夫だろうか?

ルルシーもルルシーで、そわそわした様子だし…。

アイズだけはさすがの貫禄を見せ、いつもと様子が変らないように見えた…けど。

内心は、もしかしたら穏やかじゃないのかも。

「…大丈夫ですよ、そんなに緊張しなくても」

皆の緊張を和らげようと、俺はそう言った。

「…そう言ってもな、舐めて良い相手ではないだろ」

と、ルルシー。

それはそうですけど。

「大丈夫ですって。帝国自警団ごとき」

「…何処から来るんだ?その自信は…」

言っておきますけど、決して虚勢じゃないですよ。

だって、そうだろう?

帝国自警団が腑抜けている間、『青薔薇連合会』は帝国騎士団と共に、いくつものルティス帝国のピンチを乗り越えてきた。

自警団がどんなにイチャモンをつけてこようと、その事実に変わりはない。

俺達を違法な組織としてなじることは出来よう。

しかし、俺達が残してきた功績を否定することは出来ない。

そういう意味では、俺達は帝国自警団に強く出ることが出来る。

…それに、理由はもう一つ。

いかに、帝国自警団のリーダーが切れ者だろうと…人の上に立つ非凡な才能を持っている者は、そうそういるものではない。

認めるのは癪だが、オルタンスとか。あとは箱庭帝国のルアリスとか。

上に立つ者として、相応の能力を持っている者は少ない。

つまり、何が言いたいのかと言うと。

帝国自警団のリーダーなど、恐れるに値しない存在だということだ。