The previous night of the world revolution7~P.D.~

「そうね…。正直、帝国自警団が出てくるのは予想してなかったわね」

…とのこと。

無理もない。ここ最近の帝国自警団の存在感のなさを鑑みれば。

影のうっすい帝国自警団なんざ、頭の端に上ることもなかろう。

俺でさえ、想定外だったくらいだからな。

「私としても、痛くもない腹を探られるのは好ましくないわ」

「…では、『青薔薇連合会』の出方は…」

「私達の家を家探ししたいと言うなら、好きにさせてあげれば良いわ」

アシュトーリアさんは、さすがの貫禄を見せ。

にっこりと微笑んでそう言った。

…そう言うと思いました。

「好きに、って…!アシュトーリアさん、本気ですか?」

身を乗り出すルルシー。

「えぇ、本気よ」

「それは…あまりに迂闊です。一度踏み込むことを許したら、これから先も何度も同じ要求をされるかもしれません」

うーん。それはあるかもしれませんね。

一度捜査を許したが最後、しょっちゅう踏み込まれるかも。
 
それどころか、自警団から監視員みたいな人間を送られて、常時監視されることになる恐れもある。

マフィアの威光も地に堕ちるな。

「無視するか、突き返すべきです。『青薔薇連合会』は何者にも屈しないという姿勢を見せつけるんです」

ルルシーの言いたいことも分かる。

それはそれで手だと思うけど、しかし今回は…。
 
「勿論よ、ルルシー。あなたの言う通り。『青薔薇連合会』は何者にも屈しないわ」

「だったら…」

「だから、見たいものがあるなら好きに見れば良いのよ。私達は一向に構わないわ」

「…!」

そう言われて、ルルシーはハッとした。

…その通り。さすが、アシュトーリアさんの懐の深さよ。

『青薔薇連合会』は、帝国自警団ごときが何をしようと動じない。

見たいものがあるなら見れば良い。踏み込みたいなら好きにすれば良い。

そんなことくらいで、『青薔薇連合会』は狼狽えたりしない。

お好きにどうぞ。

それが、アシュトーリアさんの考えだった。

危険な賭けではありますけど。

ルルシーの言う通り、一度踏み込まれたが最後、難癖をつけられてちょっかい出されるかもしれない。

そのリスクを踏まえた上で…自警団の好きにさせれば良い。

「むしろ、これを好機と捉えましょう。帝国自警団の団長…ブロテ・ルリシアスがどんな人物なのか、帝国自警団が何を考え、何が目的なのか…見極める良いチャンスだわ」

ピンチは最大のチャンスとは、よく言ったもの。

やられっぱなしにはならないという、強い意志を感じる。

さすが、我ら『青薔薇連合会』の首領。

器の大きさが、ローゼリア女王なんかとは大違い。

誇らしくなりますね。

「…危険な綱渡りには違いありませんが…。…アシュトーリアさんがそう仰るなら」

これにはルルシーも、渋々引き下がった。

ルルシーったら、相変わらず心配性なんだから。

アシュトーリアさんはこれだけ腹を決めているのだから、彼女の決定に従う他あるまい。

ちなみに、俺もアシュトーリアさんと同意見である。

これまで散々役立たずだった帝国自警団が、今更何だって?

団長が代わったからって、組織の体系は簡単には変わらない。

向こうが俺達の腹を探りたいというなら、こちらも同じことをさせてもらうまでだ。

精々、盛大に「歓迎」させてもらうとしよう。