The previous night of the world revolution7~P.D.~

アイズの例え話により、アリューシャも状況を把握した。

その上で…。

「それで、具体的に帝国自警団は、『青薔薇連合会』に何をしようとしてるの?」

シュノさんが、心配そうな顔で尋ねた。

先程のアリューシャへの例え話を聞いて。シュノさんも不安になっているらしい。

無理もない。

「簡単に言うと、任意で家宅捜索を求められてるんだよ」

アイズは、『青薔薇連合会』に届けられた文書をテーブルの上に置いた。

帝国自警団から『青薔薇連合会』に届いたこの紙切れこそが、今俺達を悩ませている頭痛の種なのである。

「…家宅捜索…って、家の中を検めるってことよね?」

「そうだね。『青薔薇連合会』の場合は、家じゃないから立ち入り捜査だけど…」

まぁ、やることは大して変わらない。

踏み込んで、荒らして、調べるのだ。

不快の極みだな。

「そ、それって…。不味いんじゃないの?『青薔薇連合会』が強制捜査を受けるってこと?」

と、一瞬青ざめるシュノさんだったが。

そこまでの心配は必要ない。まだ。

「本来家宅捜索は強制捜査で、令状が必要なんだけど…。今回の立ち入り調査は、任意捜査の一環だよ」

「任意…じゃあ、断ろうと思えば断れるってこと?」

「そうだよ」

シュノさんはホッとしたように、肩を下ろした。

まだ帝国自警団は、『青薔薇連合会』が違法な行為をしたという、確かな証拠を掴んだ訳ではない。

従って、いかに権限を持つ自警団と言えども、『青薔薇連合会』に手出しをすることは出来ない。

しかし、怪しい組織、危険な組織として監視することは出来る。

それが、今回『青薔薇連合会』に突如送られてきた、先程アイズが持っていた文書。

『青薔薇連合会』に任意の立ち入り調査を求める、帝国自警団から届いた文書である。

この一枚の紙切れが、俺達から楽しい海水浴を奪ったのだ。

忌々しいことこの上ない。

「今この時点で、『青薔薇連合会』が法的な処分を受ける心配はない」

「つまり、捕まらないってことよね?」

「勿論だよ」

もし逮捕状が出されていたら、こんなに悠長なことをしている暇はなかっただろう。

そして、『青薔薇連合会』を捕まえるのは楽ではない。

確かに俺達は非合法組織として、あらゆる人様に言えない方法で稼いでいるものの…。

その不正の証拠は、一切残していない。

当たり前だろう?誰が、みすみす踏まれて困る尻尾を残すものか。

どんなに徹底的に洗っても、『青薔薇連合会』に強制捜査を仕掛けるような証拠は出てこない。

しかし、確かな証拠がなくても…監視をすることなら出来る。

今回の立ち入り調査もその一環。

「悪いことしてないだろうな?」と、帝国自警団の連中が『青薔薇連合会』本部を偵察に来るのだ。

これは任意の捜査だから、アイズの言う通り、拒否することが出来る。 

俺達だって、腹を探られて嬉しいはずがない。

俺の腹はこんなに真っ白で清らかなのに、何を探ることがあるというのか。

「…どうするんですか?アシュトーリアさん。この立ち入り調査」

と、ルーチェスがアシュトーリアさんに尋ねた。

これまで、ずっと沈黙を守っていたアシュトーリアさんだが。

帝国自警団直々の「果たし状」を前にして、彼女がどのような決断を下すのか…。

何となく予想は出来ているが、アシュトーリアさん自身の口から聞きたかった。