The previous night of the world revolution7~P.D.~

これだけ様々な事件が起きているのに。

帝国自警団は役目を果たすどころか、名前すら聞かなかった。

「ふーん。そいつら何の役にも立ってねーじゃん。いる意味あんの?」

相変わらず、身も蓋もないアリューシャである。

しかし、俺も同感だ。

いる意味…なくね?

だって、ルティス帝国はこれほどの有事に見舞われたというのに。

アリューシャの言う通り、帝国自警団は何の役にも立たなかった。

「帝国自警団の代わりに、全て『青薔薇連合会』が解決したと言っても過言ではないからな」

「自警団なんかより、よっぽど頼り甲斐がありますよね〜」

ルリシヤとルーチェスが言った。

全くだ。

いつだって、ルティス帝国で起きた事件を解決してきたのは、帝国騎士団と『青薔薇連合会』である。

特に俺達の功績の方が大きいのは、言うまでもない。

その中でも、特に俺の手柄だな。

MVPですから。俺。

「そんなに名ばかりの組織なら、いっそ解散してしまえば良いものを…」

と、ルルシーは眉をひそめて言った。

うん。個人的には、俺もルルシーの意見に賛成だ。

でも、それはなかなか難しいだろう。

「どうでしょうね。いくら弱体化したとしても、自警団を解散するのは難しいでしょう」

「何でだ?それほど役に立ってないなら、もう必要ないだろう」

「下らないメンツの問題ですよ。帝国自警団は、帝国騎士団ほどではないにせよ…それなりに歴史の深い組織なんです」

「…あぁ…そういうことかよ」

と、ルルシーは吐き捨てるように言った。

そう、そういうことです。

「伝統ある組織だから、簡単に解散出来ないんだな?」

「そうですね」

端的に言えばそうなる。

帝国自警団がこれほど影の薄い存在になったのは、ここ最近の話であって。

一応、こうなる前は…帝国騎士団と帝国自警団は、ルティス帝国を支える二本の柱としての役目を果たしていた。

「帝国騎士団ほどではないにせよ、帝国自警団もそこそこ人気な組織だったんですよ。帝国騎士は堅苦しいから、自警団に入りたいっていう人は大勢いましたし」

「そうなのか…」

帝国自警団は、帝国騎士団と比べると若干「緩い」組織だ。

それに比べて、帝国騎士団はご存知の通り、頭が金槌より硬い連中の集まりだからな。

更に、帝国騎士団は貴族出身者が多く、貴族のメンツだのプライドだの、色々面倒なしがらみに囚われている者も多いが。

その点帝国自警団は、平民出身者がほとんどだ。

当然、面倒な貴族のしがらみなどはない。

上下関係も、帝国騎士団に比べればかなり緩いし。

ルティス帝国を守りたい(笑)という若者達は、こぞって帝国騎士団や、帝国自警団に入団していた。

俺は貴族だったから、帝国自警団に入るという選択肢はなかったけど…。

「…ここだけの話、もし帝国自警団が今ほど落ちぶれていなかったら…。帝国騎士団から追い出された後、俺は『青薔薇連合会』ではなく、帝国自警団に入っていたかもしれませんね」

「…!ルレイア…」

今となっては、そうしなくて本当に良かったと思うけど。

帝国騎士団の掲げる「正義」に裏切られた、あの頃の俺だったら。

今こそ帝国騎士団の腐敗を正すときとばかりに、帝国自警団に鞍替えしていたかもしれない。

その可能性は、充分にあっただろう。