――――――…あぁ、気が進まねぇ。

これから行われる「商談」のことを思うと、心底うんざりする。

それなりに長生きして、それなりにこの商売に携わってきた身として。

今回の「商談」は、いつもとは違う。

もっときな臭くて、怪しい匂いがする。

根拠がある訳じゃない。ただ長年の勘として、そう感じるだけだ。

だから、気が進まなかった。

出来れば近づきたくはない。断って、関わり合いになることを避けたかった…けれど。

「…そうも行かねぇよな」

俺だって商売をやってるのだ。「うちの商品を取り扱ってもらえないか」と営業しに来た相手を、無下に追い払う訳にはいかない。

しかも、今回の「商談」相手の親玉は、うちの上得意様と来た。

ますます、断る訳には行かなかった。

嫌でも、気が進まなくても…せめて話くらいは聞かなければならない。

「…ジュリスさん、そろそろ時間です」

「あぁ…。今行くよ」

部下の一人、マキナスが俺を呼びに来た。

さて、じゃあ行くか。…気は進まないが「商談」の会場に。