「…」

「…」

…僕のスマートフォンから、『Frontier』の最新シングル曲が鳴った。

僕達は、突然聞こえたその音に箸を止めた。

…何ですか。

今、僕ハラミを食べようとしてたんですけど?

全く、なんてタイミングだ…。

大体僕は今日、オフなんだが?

仕事の話じゃないよな…?

箸を起き、スマートフォンを取り出してみると。

「…」

画面に映し出されたその名前を、僕は思わずじっと眺めてしまった。

「…えぇっと、どなたから?」

と、ルヴィアさんが尋ねた。

「…ルレイア師匠ですね」

「あ…ルレイアさんが…」

他の誰かならともかく、他でもない僕の師匠である、ルレイア師匠からの連絡なら。

無視をする訳にはいかないですよね。当然。

何だか嫌な予感がするから、正直あまり出たくないんだが…。

…仕方がない。

ハラミはちょっとお預けで、電話に出るとしましょうか。

「はい、ルレイア師匠」

『こんにちは、ルーチェス。今何してました?』

スマホの向こうから、ルレイア師匠の声が聞こえてきた。

「セカイさんのお腹を鑑賞しながら、ハラミを食べようとしてるところでした」

『成程。それはそれは。邪魔して申し訳ないです』

「全くですよ」

せめて、一口食べてから連絡して欲しかったですね。

凄く未練が残るじゃないですか。

「それで、どうかしました?」

『お楽しみのところ、本当に申し訳ないんですが…。実は残念なお知らせです』

「やっぱりそうですか?」

そうなんじゃないかと思っていたところだ。

僕の嫌な予感って、大抵当たるんですよね。

ルレイア師匠もそうらしい。似た者師弟ってことだ。

『俺達も、さっきアイズのところに連絡があって…。急遽、海水浴を中断して、今本部に戻ってるところです』

…とのこと。

それはまた…本当に緊急事態のようですね。

今日はルレイア師匠達も、幹部組で仲良く海水浴に行っていたはず。

それなのに、突然電話一本で海水浴を中断し、休日のはずなのに『青薔薇連合会』本部に戻るとは。

何があったのか、あまり想像したくないですが…。

多分、ろくなことじゃないのは確かだ。

「どうしたんですか?」

『…端的に言いますね』

「どうぞ」

『帝国自警団が、動き出したそうです』

…。

…成程。

ルレイア師匠達が、海水浴を中断した理由が分かった。

…それはまた…厄介なことになったものだ。

『悪いんですが、ルーチェスも合流してもらえますか』

「…仕方ないですね。分かりました」

幹部組が全員戻っているのに、僕だけ海水浴を楽しむ訳にはいかない。

と言うか、そんな連絡を受けて…これ以上、呑気に海水浴を楽しむ気にはなれなかった。

…分かりましたよ。

ハラミは当分お預け、ってことでしょう?