更に一時間後。

ようやく、エンドロールが流れ始めた。

…復讐を遂げた主人公が、気が狂ったような高笑いをしたところで、エンディングだよ。

非常に後味の悪い映画だった。

はぁ…。観ているだけで陰鬱な気分になる…。

それなのに、ルレイアとルーチェスはと言うと。

「いやぁ、面白かったですね」

「本当。良い映画でした」

これを面白かったとか、良い映画だったと言えるなんて。

お前ら、何か悩みでも抱えてるのか?相談乗ろうか?

何が面白いんだよ。気持ち悪いだけだった。

「これがアダルトビデオだったら、もっと面白かったんですけどね」

何を言ってるんだルーチェスは。

絶対頭湧いてる。

「俺もそう思うんですけど、ルルシーが嫌だって言うから仕方なく…」

ルレイアも何言ってるんだ。

俺か?俺のせいなのか?

「ちなみにこの映画、続編があるんですよ。続けて観ます?」

マジで?これまだ続くの?

「おっ、良いですね、観ましょうか」

「分かりました。じゃあ続編を…」

「ちょっと待て、お前ら。ちょっと待たんか!」

俺はディスクを入れ替えようとするルレイアを、すんでのところで止めた。

危ない危ない。

このままだと、またあと二時間、拷問のような時間を過ごすことになるところだった。

「こんな鬱映画を、二本も立て続けに観せられてたまるか!」

「大丈夫ですよ、ルルシー。続編はコメディ映画ですから」

何がどう間違ったら、サイコホラー映画の続編がコメディ映画になるんだ?

大胆過ぎる路線変更。

逆に気になるから、ちょっと観てみたくもなったが…。

それどころじゃないだろう、今は。

「そんなことより、ルーチェス!」

「はい?」

きょとんと首を傾げるな。

「セルテリシアと話してきたんだろう?どうなったんだ?」

「…どうなったと言われましても…」

「あの女、何て言ってた?上手く懐柔出来そうか?」

喧嘩別れしてきたってことはないだろうが。

ルーチェスから見て、セルテリシアはどんな風に映った?

上手くセルテリシアの信頼を得て、味方につけられそうか?

「うーん…。どうだったかと聞かれても、簡単に説明するのは難しいんですけど…」

とのこと。

そんなに混み入った話をしたのか?

やっぱり気になるから、洗いざらい喋ってくれ。

しかし。

「一言で言うなら、ルレイア師匠の予想通りでした」

…は?

「ふむ、やはりそうですか。なら心配要らないですね」

「はい。僕もそう思います」

「じゃ、しばらくは泳がせておきますか…」

「そうですね。それで良いと思いますよ」

おい。お前らだけで勝手に納得するな。

俺にも話せよ。

「あのな、お前ら。ちゃんと説明ってものを…」

と、いう俺の訴えは。

「なら、この件は一段落ですね。よーし、続きを観ましょう」

「はい。コーラのお代わり、どうぞ」

…サイコホラー映画の続編に負けた。

…そのブルーレイディスク、叩き割ってやろうか。

「はい、ルルシー。コーラですよ」

「…」

ルレイアに笑顔でコーラのグラスを渡され。

一周回って気の抜けた俺は、もうそれ以上突っ込むのをやめた。