――――――…ルーチェスが、セルテリシアを「口説いて」いる間。

俺とルレイアは、『ブルーローズ・ユニオン』の自分の部屋で待機していた。

『うわぁぁぁ!助けてくれぇぇ!』

『ははは、ザマァ見ろ。ザマァ見ろクズが!』

『死にたくない!助けてくれ!死にたくないぃぃぃ!』

という、断末魔の叫びが部屋の中に響いている。

「…なぁ、ルレイア」

「はい、何ですかルルシー」

…一時間ほど前から、二人で並んで座って、テレビ画面を眺めててさ。

ずーっと思ってることがあるんだけど。

言っても良いだろうか。

よし、言おう。

「…何で俺はさっきから、こんなグロいサイコホラー映画を観せられてるんだ?」

血飛沫舞ってるんだけど。これ絶対R18映画だろ。

しかも、ただのホラーじゃない。

復讐系サイコホラー映画。

復讐に燃える主人公が、恍惚とした顔でナイフを振りまくっている。

観ているだけで鬱になりそうなストーリー。

「だって、ルルシーがアダルトビデオは嫌だって言うから…」

俺のせいなのか?

だって、仕方ないだろ。

「ルーチェスが帰ってくるまで暇ですね。何か観ます?」という、ルレイアの一言から始まり。

良いよ、と答えたのが間違いだった。

「じゃあ、アダルトビデオとそうじゃない映画とどっちが良いですか?」という、選択の余地がない二択を迫られた。

当然後者を選んだら、復讐系サイコホラー映画(R18)を観せられてしまった。

何だよ。この地獄の選択肢。

それなのに、ルレイアと来たら。

「面白いでしょう?主人公の鬼気迫る顔が堪りませんよね〜」

このグロいスプラッタを観て、にこにこしている始末。

お前とは映画の趣味が合わないようだな。

「…はぁ…」

頭が痛くなってきた。