「私はアシュトーリアさんやアイズレンシアさんのような、リーダーに相応しい器は持っていません」

知ってます。

さっきから何度も聞いてます。

「でも…サナリ派の皆さんの期待に応えたいと思っているのも事実です。私は…覚悟を決めなければならないのかもしれません」

「…」

その覚悟っていうのは…「諦めて『青薔薇連合会』の首領になることを受け入れる」覚悟ですか。

そんな覚悟は、出来れば一生しないで欲しいな。

「…済みません、あなたにこのような…愚痴のようなことを言ってしまって」

愚痴のようなことって言うか、普通に愚痴でしたよね。

要約すると、「私はリーダーなんてなりたくないのに、周りに担がれるから仕方なく」ってところですかね。

「いいえ。僕は少しでも、セルテリシアさんの重荷を取り除きたいんです」

「ありがとう。話を聞いてもらって、少し楽になりました」

そうか。

じゃ、話を聞かない方が良かったかな。

「今の僕は、『ブルーローズ・ユニオン』の幹部です。偉大なサナリ・リバニー様ではなく、セルテリシアさん、あなたの為に力を尽くします」

「…ありがとう。あなたの働きに期待しています」

と、言ってセルテリシアはにこりと微笑んだ。

微笑む余裕くらいはあるってことだな。

「…ルーチェスさん、そろそろエペルとミミニアが戻ってきます。今のうちに…」

「あ、はいそうですね」

そろそろタイムオーバーだ。

エペルとミミニアが戻ってくる前に、退散しておかなくては。

セルテリシアにコーラとポテチを食べさせたなんて知られたら、怒髪天を衝いて怒られるのは必至。

証拠隠滅の為に、飲みかけのコーラと食べかけのポテトチップスは持ち帰ることにした。

「また会いに来ても良いですか。折を見て」
 
「勿論です。いつでもいらしてください…と言いたいところですが、エペルとミミニアが不在のときの方が良いかもしれません」

「…みたいですね。そうします」

セルテリシアは苦笑して言い、僕も苦笑して返した。

…ひとまず。

目的は達成した…と思って良いだろう。