The previous night of the world revolution7~P.D.~

エペルとミミニアがあれほど偉そうだった理由が分かった。

世襲制の色濃く残る『ブルーローズ・ユニオン』では、「親が偉い」というだけで自分も偉くなるのだ。

そりゃあアイズ総長のことを「貧民街上がり」と馬鹿にする訳ですよ。

何せエペルとミミニアは、幹部の親を持つ大変「高貴な」生まれなのだから。

ふーん。それは大層なことで。

「エペルもミミニアも、幹部の両親のもと、将来は彼らが幹部の座を継ぐ為にそれなりの英才教育を受けています。彼らが摂政として優れているのは、その教育の賜物なんです」

「そうでしたか…」

立派な国王になる為に英才教育…なら分かりますけど。

立派なマフィアの幹部になる為に英才教育を施す、なんてことがこのルティス帝国で行われているとは。

いやはや。世界は広い。

面白いことがあるものですね。

幼い頃から幹部になる為の教育を受け、忠誠心を育てられ、おまけにセルテリシアの摂政に任命されるとは。

エペルもミミニアも、そりゃ張り切って任務をこなす訳ですね。

英才教育の賜物で、すっかり「洗脳済み」ってことだ。

エペルとミミニアに近づいて、彼らの信用を得て…なんて考えてましたけど、あれは夢物語でしたね。

「洗脳済み」の彼らが、余所者である僕達に心を開くなんてことは、一朝一夕ではまず不可能だ。

やはり、セルテリシアから懐柔するのが現実的だな。

「私を支えてくれる、とても頼りになる方々です」

「それは分かります。分かりますけど…。…アシュトーリアさん暗殺を計画したのも、エペルさんとミミニアさんなんですね?」

「…そうです。二人がサナリ派の決起を呼びかけ、その狼煙とする為に…アシュトーリアさんの暗殺を企てました」

つまりアシュトーリアさんの仇は、このセルテリシアではなく。

側近二人、エペルとミミニアなんだな。

むしろセルテリシアは、アシュトーリアさんが暗殺されないように、こっそり急所を外すように指示していた。

アシュトーリアさんの命を救ってくれた、恩人なのだ。

「私は反対しました。でも…強引に説得されてしまって…」

「…」

「私が悪いんです。私がリーダーとして頼りなく、不甲斐ないばかりに…エペルもミミニアも、このような強引な手段を取らざるを得なかった。二人は悪くありません。彼らは心から『ブルーローズ・ユニオン』の為、サナリ派の未来を思って行動しているのですから」

セルテリシアの良いところは、「側近二人に強引に説得されただけだから、私は悪くありません」と開き直るのではなく。

「全ては自分の力量不足が招いた結果」だと、素直に認めるところだな。

なかなか殊勝な心掛けです。

この女クズ野郎だな、と蔑むことが出来ないのも、このセルテリシアの素直さにある。

ルレイア師匠と同じくらい、素直な良い人ですね。

「でも…あなたは、アシュトーリアさんの命を救うように指示した、ですよね?」

「…はい。私が『青薔薇連合会』の首領なんて…とてもじゃないけど無理だと思ったから…」

ちゃんと身の程を弁えているようで、素晴らしい。

その姿勢には好感が持てますね。