セルテリシアは、アシュトーリアさんに死んで欲しくなかった。
それはつまり…。
「…あなた自身は、『青薔薇連合会』の首領になりたいとは思ってない、ってことですか?」
「…はい」
セルテリシアは素直に、こくりと頷いた。
…。
…そこは嘘でも、「いえ、そんなことはありません」と言って欲しかったですよ。
こんな意志薄弱な小娘が、サナリ派のリーダーだとは…。
馬鹿馬鹿しくて、気が抜けそうになる。
ルレイア師匠が聞いてたら、「アホくさっ」とか言ってそうだな。
僕もそう思います。
アホくさっ。
しかし、そんな態度はおくびにも出さずに話を続ける。
「理由を…聞いても良いですか?あなたは『ブルーローズ・ユニオン』の代表で、サナリ・リバニーの血縁者なんでしょう?」
従姪孫、だったか。セルテリシアにとって大叔父に当たる人物…。
そんなご立派な叔父様を持ちながら、何故首領になりたくないと言うのか。
「えぇ、そうです。私の大叔父様がどれほど素晴らしい方だったかは…幼い頃から、色々な人に聞かされました」
でしょうね。
「ですが…私はその大叔父様に、会ったこともないんです。精々、写真で姿を見ただけで…」
でしょうね。
「いくら素晴らしい叔父を持っていようと…私は大叔父様ではありません。彼のように…立派に『青薔薇連合会』を導けるとは…そんな器が私にあるとは…とても思えないのです」
でしょうね。
ジェットストリームでしょうね。
という冗談はさておき。
セルテリシアは自分の器の大きさというものを、しっかり自覚しているらしい。
立派な態度じゃないですか。
自分の身の程というものを自覚するのは大切ですよ。
他人に迷惑をかけるのも、いの一番に殺されるのも、大抵は身の程を知らない奴だと相場が決まってますから。
「私は大叔父様のように、生まれ持ったカリスマなどありません。力強く皆を導くことも…私には…」
「…」
「私は…私は本当は…。…本当、は…」
俯いて言葉に詰まるセルテリシア。
そんな彼女の両手を、僕はそっと包み込んだ。
セルテリシアはハッとして顔を上げた。
言っときますが、このスキンシップは浮気ではないので、あしからず。
ここは「責め時」と判断した。
「良いんですよ、話してください…。誰にも言いませんから」
「ルーチェスさん…」
「…分かりますよ、気持ちは。僕も…生まれたときから、ルティス帝国の国王に相応しい人物になれと発破をかけられ、重荷を背負わされて育ちましたから」
これは嘘ではない。事実である。
この点においては、僕とセルテリシアは似た者同士だ。
「常に『強い人間』であらなければならなかった。いかなるときでも堂々と振る舞うよう期待され、誰にも弱みを見せることは出来なかった」
「…それは…」
「…あなたもそうなんですよね?」
「…えぇ、そうです」
セルテリシアは薄っすらと涙を滲ませながら、こくりと頷いた。
それはつまり…。
「…あなた自身は、『青薔薇連合会』の首領になりたいとは思ってない、ってことですか?」
「…はい」
セルテリシアは素直に、こくりと頷いた。
…。
…そこは嘘でも、「いえ、そんなことはありません」と言って欲しかったですよ。
こんな意志薄弱な小娘が、サナリ派のリーダーだとは…。
馬鹿馬鹿しくて、気が抜けそうになる。
ルレイア師匠が聞いてたら、「アホくさっ」とか言ってそうだな。
僕もそう思います。
アホくさっ。
しかし、そんな態度はおくびにも出さずに話を続ける。
「理由を…聞いても良いですか?あなたは『ブルーローズ・ユニオン』の代表で、サナリ・リバニーの血縁者なんでしょう?」
従姪孫、だったか。セルテリシアにとって大叔父に当たる人物…。
そんなご立派な叔父様を持ちながら、何故首領になりたくないと言うのか。
「えぇ、そうです。私の大叔父様がどれほど素晴らしい方だったかは…幼い頃から、色々な人に聞かされました」
でしょうね。
「ですが…私はその大叔父様に、会ったこともないんです。精々、写真で姿を見ただけで…」
でしょうね。
「いくら素晴らしい叔父を持っていようと…私は大叔父様ではありません。彼のように…立派に『青薔薇連合会』を導けるとは…そんな器が私にあるとは…とても思えないのです」
でしょうね。
ジェットストリームでしょうね。
という冗談はさておき。
セルテリシアは自分の器の大きさというものを、しっかり自覚しているらしい。
立派な態度じゃないですか。
自分の身の程というものを自覚するのは大切ですよ。
他人に迷惑をかけるのも、いの一番に殺されるのも、大抵は身の程を知らない奴だと相場が決まってますから。
「私は大叔父様のように、生まれ持ったカリスマなどありません。力強く皆を導くことも…私には…」
「…」
「私は…私は本当は…。…本当、は…」
俯いて言葉に詰まるセルテリシア。
そんな彼女の両手を、僕はそっと包み込んだ。
セルテリシアはハッとして顔を上げた。
言っときますが、このスキンシップは浮気ではないので、あしからず。
ここは「責め時」と判断した。
「良いんですよ、話してください…。誰にも言いませんから」
「ルーチェスさん…」
「…分かりますよ、気持ちは。僕も…生まれたときから、ルティス帝国の国王に相応しい人物になれと発破をかけられ、重荷を背負わされて育ちましたから」
これは嘘ではない。事実である。
この点においては、僕とセルテリシアは似た者同士だ。
「常に『強い人間』であらなければならなかった。いかなるときでも堂々と振る舞うよう期待され、誰にも弱みを見せることは出来なかった」
「…それは…」
「…あなたもそうなんですよね?」
「…えぇ、そうです」
セルテリシアは薄っすらと涙を滲ませながら、こくりと頷いた。


