The previous night of the world revolution7~P.D.~

…40分後。

我が家の食卓には、家庭料理と呼ぶには豪勢なメニューの数々が並んでいた。

壮観。

餃子だけで、こんなに種類があるとは…。

しかも、包み方がまたお洒落。

普通の包み方だけじゃなくて、風車みたいな形や、薔薇の形の餃子まである。

あれ、本当に餃子か?

こんなお洒落な包み方があるとは…。

これもルーチェスさん作なんだろうか?凄いな…。

…おまけに。

「はい、ルヴィアさん。餃子のタレをどうぞ」

「あっ、はい。どうも」

『青薔薇連合会』の裏幹部に、餃子のタレを取ってもらうとは。

あまりに畏れ多くて、餃子の味を楽しむどころじゃない。

「色々ありますよ。どれにします?」

「えっ?」

「こっちがノーマル、こっちはラー油増し、こちらは柚子胡椒味、イタリアン風もあります」

ルーチェスさんはお手製の餃子のタレを、次々と持ってきてくれた。

そんなに種類が。

何でも本格的だよな、ルーチェスさん…。手を抜くことがないって言うか…。

「さっぱり食べたいなら、おろしポン酢タレもありますよ」

「…ありがとうございます。どれでも結構です…」

「そうですか。じゃあ僕のおすすめの、イタリアン風タレをどうぞ」

恐縮です。

早速ルーチェスさんの餃子を、ルーチェスさんの餃子のタレで食べてみることにした。

…うん。

「どうですか?味は」

「…凄い美味しいです」

何だろう。普通の餃子とは全く違う味。

でも、それが凄く美味しいのである。

餃子じゃないみたいだな。

意外とあっさりしていて、いくらでも食べられるって言うか…。

普通の、キャベツとひき肉の餃子も美味しいけど。

たまにはこういう、変わり種の餃子もアリかもしれない。

「ん〜!美味しい!さすがルーチェス君だ〜」

「ありがとうございます」

セカイさんも、満面笑みで餃子にぱくついていた。

料理上手な旦那さんを持って、セカイさんは幸せだろうな。

しかしそれを言うなら、俺も…。

…と、思ったら。

「…」

「…はっ…」

ルーチェスさん作の餃子ばかりを食べていた俺を、フューニャがじーっと睨むように見ていた。

とんでもない。

俺は慌てて、フューニャ作のノーマル餃子を口に入れた。

フューニャ作の餃子は生姜が効いていて、キャベツたっぷりで、いくらでも食べられる味だった。

そして何より、フューニャの料理は。

実家のような安心感と言うか…舌に馴染む味である。

あぁ、帰ってくるべきところに帰ってきたなぁ、という味。

分かるだろうか。この感覚。

外食も良いけど、やっぱり実家で食べる味噌汁が一番美味しい、みたいな。

フューニャの料理は、そういう味である。

「美味しいよ、フューニャ。いつも通り」

ほっこりしながら、俺はフューニャ作の餃子を食べた。

偽らざる本音である。

「…本当ですか?」

「勿論。俺にとって、フューニャのご飯以上に美味しいものはないよ」

「…そうですか」

この褒め言葉で、機嫌を直したらしいフューニャは。

安心したのかホッとしたのか、フューニャも餃子を食べ始めた。