「ルーチェス。何か反対意見が?」

「いえ、反対意見はありません。全面的にルレイア師匠に同意します」

それは良かった。

「では、何ですか?」

「セルテリシア・リバニーを懐柔する、その大切なお役目…不肖このルーチェスめにお任せ頂けませんか?」

この申し出には、さしもの俺も驚いた。

ルルシーも、目が点になっている。

ほう…?

「ルレイア師匠の薫陶を受けた身として、必ずやり遂げてみせます」

成程。その心意気…嫌いじゃない。

「簡単な仕事ではありませんよ。それに、失敗したら取り返しが付きません」

「重々承知の上です」

「…よし、分かりました」

俺の可愛い弟子が、ここまで覚悟を決めているのだ。

師である俺が信じなくてどうする。

「ではルーチェス、セルテリシアのことはあなたに任せます」

「ありがとうございます!」

「お、おいおい…良いのか?」

ルルシーは、心配そうな顔でそう言った。

良いに決まってますよ。

「ルルシー、あなたルーチェスのことが信用ならないと?」

「いや、そうは言ってない。でも…危険な仕事だろう?」

「別に命までは取られやしませんよ」

「…それはそうだが…」

…それに。

「ルーチェスなら上手くやってくれるはずです。俺はそう信じてますから」

弟子のことが信じられないなら、任せたりなんかしませんよ。

ルーチェスなら大丈夫だと確信しているから、この大事な任務を任せられるのだ。

「…分かったよ。ルレイアが信じると言うなら、俺も信じる」

ルルシーも決意を固めてくれたようだ。

そう来なくては。

「ただ、もし一人じゃ危ないと思ったら、すぐ言うんだぞ。絶対一人で抱え込むな。分かったな?」

と、念を押すことも忘れないルルシーである。

仕方ないですね。ルルシーは心配性ですから。

「分かりました。そうしますよ」

ルーチェスも苦笑いで頷いた。

…よし、これで話は決まりましたね。

「…じゃあ景気付けに一発、ルーチェスからどうぞ」

俺は、ルーチェスにマイクを手渡した。

トップバッターはあなたに譲りますよ。

「分かりました。では僕がお気に入りの、『frontier』の3枚目のアルバムから書き下ろし曲を一曲」

「…お前ら、そんな呑気で本当に大丈夫か…?」

というルルシーの呟きは…。

…やっぱり、聞こえなかったことにした。