The previous night of the world revolution7~P.D.~

家の中にフューニャの姿を見つけて、ひとまずは安心したが。

…それで。

何でここに、アンブローシア夫妻が…?

しかも。

「はい、フューニャさん。こっち終わりましたよ」

「ありがとうございます。とても助かります」

「お気になさらず。そろそろ焼いて良いですか?」

「そうですね。私がやりましょう」

「いえ、僕がやりますよ。この時期は台所に立つと暑いですからね」

「全くです。では、お任せしても?」

「お任せください」

…何故かルーチェスさんは、フューニャと和気あいあいと喋っていた。

何だろう。このもやもや感。

そこは俺の居場所のはずなんだけど?

「では、私はその間…」

「そっちを包んでもらえますか?途中まではやったんですが、まだタネが残ってて」

「分かりました」

フューニャは腕まくりをして、薄くて丸い餃子の皮を手に取った。

…餃子の皮?

よくよく見たら、大きなお皿いっぱいに、うず高く盛られている白い小さな塊。

あれは餃子である。

「…餃子…?」

「えぇ、餃子です」

慣れた手付きでフライパンを動かしながら、ルーチェスさんが言った。

…何処からどう見ても、餃子ですね。

「フューニャさんに会いに来たら、今夜は餃子だってことで準備していたので、手伝わせてもらうことにしたんです」

「良かったねー、ルヴィア君。今日は餃子パーティーだよ」

ルーチェスさんとセカイさんが言った。

あ、成程そういうことか。

ようやく話が理解出来てきた。

何らかの用事があって、ルーチェスさんとセカイさんはうちにやって来て。

丁度そのとき、フューニャは夕食の準備の為に、餃子を作っているところだった。

で、折角だから「一緒にどうですか」という話になって、ルーチェスさんが夕食の支度を手伝ってくれていると…。

成程…。

…。

…って、俺は何を一人で納得してるんだ。

「フューニャさん、これ羽根付きにして良いですよね?」

「えぇ、お願いします」

「じゃ、ちょっと小麦粉お借りしますね」

小麦粉お借りしますね、じゃないんですよルーチェスさん。

我に返った俺は、慌ててルーチェスさんを止めに入った。

「ちょ、ちょっとルーチェスさん、やめてください」

「え、何でですか?羽根付き餃子、嫌いですか?水餃子にしましょうか?」

そういう問題じゃないし、羽根付き餃子は普通に好きです。

そうじゃなくて。

「ルーチェスさん、よしてください。そういうことは俺がやりますから…」

ルーチェス・アンブローシアと言えば、最早『青薔薇連合会』で知らない者はいない。

あのルレイア・ティシェリーの愛弟子。『青薔薇連合会』初、『裏幹部』の称号を持つ者。

神秘のベールに包まれた彼の実力は、誰もが噂するところである。

裏幹部とはいえ、ルーチェスさんは『青薔薇連合会』の幹部とほぼ同等の権威をお持ちだ。

俺の直接の上司は、ルルシーさんだけど。

しかし幹部クラスとなると、俺の上司も同然。

まさか、幹部であるルーチェスさんに餃子を焼かせる訳にはいかない。

そういうことは俺が代わりにやるから、ルーチェスさんは座って待っていてくれたら…。

…と、思ったのだが。