「ルルシーってあれですか。野菜とか肉は国産じゃないと駄目なタイプですか?」

いますよね、たまに。

スーパーとかでも、「これは国産じゃないから買わない」とか言う人。

別に国産にこだわるのが駄目とは言いませんけど、贅沢じゃありません?

外国産でも美味しいものはたくさんあるし、そんな縛りプレイで買い物するのは勿体なくないですか?

「別に国産じゃないと駄目とは言ってない」

「でも、シェルドニア王国産は嫌なんでしょう?」

「シェルドニア王国産が嫌って言うか…。…じゃあ例えば、このミルクレープに挟んであるクリーム」

「はい」

「このクリーム、原材料は?」

ミルクレープのクリームですか?それは確か…。

「シェルドニアクロアシナガバチのペーストです」

「ほらな、言わんこっちゃない。じゃあこっちのゼリーは?何を使ってる?」

「ゼリーは確か、シェルドニアクロゾウの目玉です」

「言わんこっちゃないだろうが、ほら」

何がですか。

ルルシーが何をそんなに、鬼の首を取ったように言ってるのか分かりませんよ。

「俺はシェルドニア王国産の食べ物が嫌なんじゃない。アシナガバチのペーストやら、ゾウの目玉を食べたくないだけだ」

「…好き嫌い…?」

「ハチだのゾウの目玉だの、そもそも食べ物じゃないからノーカンだ」

それは偏見というものですよ。ねぇ?

国が違えば、文化が違えば、アシナガバチやゾウの目玉を食べることもあるかもしれないじゃないですか。

俺は嫌ですけどね。

「こんなものを食わせられる、『ブラック・カフェ』の客が気の毒だ。…ちなみにこのモンブランの材料は?モンブランなら栗だから、原材料としては一番マシなんじゃ…」

「この栗は、シェルドニアクロモウドク・マロンという品種でして…」

「あぁ、成程。前言撤回だ。モンブランも最悪だよ。猛毒の栗を使うな」

確かにその栗には毒があるらしいんですけど、シェルドニアクロホルスタインの胃液で洗うと、綺麗さっぱり毒が中和されてですね…。

とにかく毒の成分は入っていないのだから、安心して食べて欲しいのだが。

きっとルルシーは潔癖症なんだろうな。

「どれが良いでしょうか?どれも美味しいですけど」

「どれも気持ち悪いけど、その中だと…。…やっぱりモンブランが一番マシか?猛毒であることを除けば…」

ルルシーはモンブランをおすすめしているようだ。

ちなみに、モンブランの生地には、シェルドニアクロザリガニの肝がふんだんに混ぜてあるのだが…。

…ルルシーには言わない方が良いかな。

「ルルシーが推すなら、モンブランにしましょうかね」

「言っとくが、別に推してる訳じゃないぞ。アシナガバチやゾウの目玉よりはマシかと思って…」

ザリガニの肝が入ってても、ですか?

…などと、ルルシーとわちゃわちゃお喋りしていた、そのとき。

「…随分と楽しそうだな」

水をぶち撒けたような冷たい口調で。

俺とルルシーの間に、割って入ってくる者がいた。