「…では改めて、次の策について話し合いましょう」

ミミニアが言った。

次…次の策って…。

「アシュトーリア・ヴァルレンシーを仕留め残った以上、ここは厳格に動くべきだろう」

「そうね…。やはり目下の敵になるのは、あのアイズレンシアとかいう幹部ね」

…アイズレンシアさん。

アシュトーリア・ヴァルレンシーさんに可愛がられ、次期首領に指名された逸材。

貧民街出身でありながら、『青薔薇連合会』幹部筆頭の座に上り詰めた人…。

私には、とても想像がつかない。

「殺してしまうべきだろう。一番手っ取り早い方法だ」

殺す。

エペルの口からそんな物騒な言葉が出てきて、私はびくっと身体を震わせた。

「今度は仕留め損なわない。あの男を黙らせれば、ヴァルレンシー派の中に首領の器はいなくなるはずだ」

「そうね…。それが一番確実だし、話が早いわね」

そんな。

ミミニアも賛成なの…?また…暗殺するだなんて。

「ちょ…ちょっと待って、二人共」

私は二人の間に割って入った。

「どうされましたか、セルテリシア様」

「こ、殺すって…。また…今度はアイズレンシアさんを暗殺するってこと…?」

「勿論です。あの男は邪魔ですから」

当然のことのように、エペルは頷いた。

…そんな…。

「で、でも…それは危険じゃないのかな…?あ、アシュトーリア・ヴァルレンシーさんの暗殺にも失敗してるのに…」

「今度はしくじりません。確実に息の根を止めるまでは帰ってくるな、と襲撃班に厳命しておきましょう」

そんな。

それはつまり、アイズレンシアさんを殺し損ねたら、その場で自決しろってこと?

「きっと難しいよ。アシュトーリアさんの身にあんなことがあったばかりなんだから…。きっと対策してるはずだよ」

「…」

「それに…こうも立て続けに暗殺事件が続いたら…周りから見てもおかしいって思われるはずだよ。ここはその…もっと慎重に…」

「…慎重に…どう動かれるのですか?」

「…えっ…」

そ…それは…。そう言われたら…。

「あ…暗殺以外の方法で、何か…。その…は、話し合ったり…」

「アシュトーリア・ヴァルレンシー暗殺未遂事件の犯人は我々だと、ヴァルレンシー派には既にバレているんですよ。今更話し合いなど、応じるはずがありません」

エペルは、私の意見をばっさりと切り捨てた。

「アイズレンシアがいなくなれば、今よりもっとセルテリシア様の正当性を強調することが出来ます。これが一番手っ取り早いやり方なんですよ」

ミミニアにもそう言われた。

…正当性…。

つまりアイズレンシアさんを殺さないと、私の正当性は主張出来ないってことじゃないか。

「そうと決まれば、すぐに動きましょう。アイズレンシアの襲撃班を組織して…」

「ま…待って、エペル、ミミニア」

止めなければ。

アイズレンシアさんの命までも…失われることになっては。

そうなったら…もう、本当に後戻りが出来なくなる。

その為に…その為に、私は…。

「そ、その前に一つ…試したいことがあるの」

これが起死回生の一手になると、そう信じるしかなかった。