正直、俺もそこまで詳しい訳ではない。

「『青薔薇連合会』サナリ派…ですか。噂には聞いていましたが、見るのは初めてですね」

連中に聞こえないよう、ルーチェスは小声でそう言った。

大丈夫ですよ。俺だって見たことないから。

「またの名を、旧『青薔薇連合会』派…。確か、先々代『青薔薇連合会』首領、サナリ・リバニーの系統を汲む派閥だったな」

と、ルリシヤが言った。

えぇ。俺もそう聞いています。

これは昔話である。

俺やルルシーが『青薔薇連合会』に入る前…どころか、俺達が生まれるずっと前の話。

その頃から、『青薔薇連合会』はルティス帝国裏社会に存在していた。

当時の『青薔薇連合会』首領の名前は、サナリ・リバニーという男だった。

アシュトーリアさんの前の前の首領に当たる。

俺達が生まれる前には死んでいるから、当然俺達はサナリに会ったことはない。

が、彼の成し遂げた偉業…と言うか、功績については、俺もよく知っている。

彼は非常に優れた指導者だったそうだ。

それまで『青薔薇連合会』は、今のように統制された組織ではなく。

チンピラ集団の延長とも言えるべき、統制の取れないならず者の集まりだったそうだ。

しかし、サナリ・リバニーが首領に就任してから、彼は徹底的に組織改革を行った。

組織をまとめ、適正に人員を配置し、人を育てて組織を育てた。

現在の『青薔薇連合会』の形態を作り上げたのは、彼の功績によるものだ。

そのとき彼が『青薔薇連合会』を統制していなければ、今日の『青薔薇連合会』はなかった。

それどころか、ならず者集団の横行に業を煮やした帝国騎士団や帝国自警団に、組織ごと潰されていてもおかしくなかった。

『青薔薇連合会』が、今日まで潰されることなく。

それどころか今日までルティス帝国裏社会において、最も大きな権利を持つ組織でいられるのは…そのサナリ・リバニーのお陰なのだ。