――――――…『青薔薇連合会』首領、アシュトーリア・ヴァルレンシーが何者かに襲撃された。

このニュースは、俺達の耳にも届いていた。

勿論、ブロテ団長が教えてくれた訳ではない。

俺達の「協力者」が最初に聞きつけて、俺達に教えてくれたのだ。

「アシュトーリア・ヴァルレンシーの暗殺か…。一番手っ取り早い方法だけど…」

同じくこのニュースを知らされた俺の理解者が、そう呟いた。

「死んだのかな?」

「さぁな…。容態まではまだ分からないからな」

もし死んでいたとして、『青薔薇連合会』はこのニュースを明らかにしたくないだろうからな。

恐らく、徹底的に伏せておくはず。

そして機を見て、自分達に都合の良いときに公表するのだろう。

小賢しい奴らだから。

「どうせなら死んでたら良いのに…」

「そうだな」

組織のトップが亡くなったとなれば、さすがの『青薔薇連合会』も少しは勢いを弱めるだろう。

…ブロテ団長は誤解しているのかもしれないが、今回アシュトーリア・ヴァルレンシーの暗殺を企てたのは俺達ではない。

俺達の狙いはあんな女ではない。

ルレイア・ティシェリーただ一人だけだ。

「狙われたのがあの男でなくて良かった。俺達以外の人間に殺されたんじゃ堪ったもんじゃないからな」

「そうだね。でも犯人は恐らく…」

「あぁ…。…あいつらだろうな」

ブロテ団長や帝国騎士団の連中と違って、俺達はアシュトーリア・ヴァルレンシー襲撃の犯人に、覚えがあった。

直接確認した訳ではないし、証拠がある訳でもないが…。

『青薔薇連合会』の首領を殺すことで得をする連中に、心当たりがある。

恐らく彼らだろう。

…敵の敵は味方、という奴だ。

「奴らが本当に『青薔薇連合会』の首領を暗殺して、事を起こすつもりなら…俺達も便乗させてもらうべきかもしれないな」

「そうだね。他の誰かにあの男を殺される前に…」

そうだ。首領の命など勝手にすれば良いが、しかし、あの男の命を横取りされるのだけは耐えられない。

…状況がどのように動いても、必ず漁夫の利を手に入れられるよう…慎重に行動した方が良さそうだ。

つくづく…あのとき、レーザー銃であの男を仕留められなかったのが悔やまれる。

だが…。

「必ず、喉笛を掻き切ってやる…」

アシュトーリア・ヴァルレンシーを殺すことは出来ても、あの男を殺すことは容易ではなかろう。

…俺達復讐者を除いては。