The previous night of the world revolution7~P.D.~

―――――…一方、その頃。

アンブローシア宅では。

「ただいまー、セカイさん」

「むごーっ!?」

「…?」

家に帰ってきたら、セカイさんが盛大に噎せていた。

どうやらセカイさん、お食事中だったようだ。

テーブルの上に、飲みかけのジュースと食べかけの…。

…?食べかけの…食べ物が置いてあった。

部屋の中に何だか…脂っこい匂いが充満している。

「…大丈夫ですか?」

「げほっ、ごほっ、ごほっ…は、はぁはぁ」

セカイさんは手を伸ばして、ストローの突き刺さったジュースを、ちゅー、と飲んだ。

そして一言。

「も、もー!びっくりさせないでよ!」

「あ、済みません…」

そんなにびっくりするとは思わなかった。家に帰ってきただけで。

「って言うかルーチェス君、今夜は遅くなるって言ってたじゃん!どうしたの?デートの予定は…」

「あぁ、それなんですけどちょっと、不慮の事故が起きまして…」

本当はルルシーさんの退院祝いパーティーを開く予定だったから、今夜の帰りは遅くなるとセカイさんに連絡していたのだ。

でも…例によって、パーティーどころじゃなくなってしまったので。

仕方なく帰ってきたんですけど…。

「不慮の事故…?って何…はっ!」

は?

「どうしたのルーチェス君。ほっぺ青くなってるよ」

セカイさんが、腫れ上がった僕の頬に触れた。

いたたたた。触られるとまだ痛いです。

言わずもがな、さっきシュノさんにぶん殴られた場所だ。

「これは男女関係の縺れです」

「あぁ、成程!今夜デートの予定だった相手にひっぱたかれたんたね?よしよし、可哀想に」

セカイさんが、よしよしと僕の頭を撫でてくれた。

妙な誤解を生んでしまったようだが…。

でも、セカイさんによしよしされるのが嬉しいから、そういうことにしておこう。

まさか組織のリーダーが暗殺されて、今死にかけてるんですよとは言えないし。

「代わりと言ってはなんだけど、セカイお姉ちゃんがデートに付き合ってあげるよ」

「ありがとうございます。それは助かる…んですけど」

「ん?」

さっきから、ずっと気になっていることがある。

僕は、大小様々な紙袋が散乱したテーブルの上に指差した。

「…何なんですか?これ」

「…」

セカイお姉ちゃんは、僕の指差したテーブルの上をじっと見つめ。

そして、食べかけのものを全て、抱き抱えるようにして隠した。

「…ルーチェス君は何も見なかった。良いね?」

「いや、ばっちり見ましたよ。これ何ですか?もしかして、これが噂に聞く…」

「何も見なかったってことにしなさい!」

「いたたた。今ほっぺた痛いんですよ。抓らないでください」

何も見なかったことにして、と言われても。

もうばっちり見てしまったんだから、今更見なかったことには出来ませんよ。