The previous night of the world revolution7~P.D.~

「どうだ?味の方は」

「うん。美味しいですよ」

さすがルリシヤ。料理の腕はプロ並み。

ルーチェスも負けてないんですよね、実は。

ルルシーも料理上手だしなぁ。

『青薔薇連合会』の幹部組は、意外と家庭的である。

この焼き立てのパンなんか、一流ホテルの味ですよ。

「ルルシー先輩はどうだ?」

「…そりゃ美味しいけどさ…」

「そうか。ルルシー先輩は一ヶ月近くも、毎日病院食だったからな。腕によりをかけようと思ったんだ」

「…気遣いどうも」

味気ない病院食を一ヶ月毎日食べた後に、ルリシヤの手料理なんか食べたら。

もう、感動で舌がびっくりですよ。

「でも、お前これ…本当にいつの間に作ったんだ?さっきまで病院にいたよな…?」

と、スプーン片手に首を傾げるルルシーである。

更に。

「それに…よく見たら、家の中めちゃくちゃ綺麗なんだけど…」

部屋の中をぐるりと見渡して、ルルシーはそう言った。

おっと。気づきましたね?ルルシー。

一ヶ月近くも留守にしていたとは思えないほど、部屋の中が何処を見ても綺麗。

埃なんて全く積もっていない。

「元々今夜は、ルルシー先輩の退院祝いパーティーを開く予定だったからな。晩餐の下準備はしていたんだ」

ルルシーの問いに、ルリシヤが答えた。

「あ、そういうことか…。いや、でも…準備してても、あの短時間でこれだけ作るのは無理だろ…」

そこはあれですよ、ルルシー。

熟練カリスマ主婦、ルリシヤの腕の見せ所って言うか。

「家の中が綺麗なのは、ルルシー先輩の留守中も俺が定期的に掃除しに来ていたからだ」

「…」

「浴室のボディーソープも詰め替えておいたぞ。窓拭きもしておいた」

ドヤァ、とドヤ顔のルリシヤである。

さすがルリシヤ。仕事に隙がない。

「…お前、俺の入院中も勝手にこの部屋に忍び込んでたのか?」

「忍び込んでいたとは人聞きの悪い。ルリシヤルームサービスだ」

「廃業しろ」

ちょっとルルシー。それは酷いのでは?

ルリシヤルームサービス…。是非とも俺も利用してみたいですね。

「ったく…。はぁ…」

溜め息をつくルルシーである。

まぁまぁ、そう落ち込まなくても。

掃除しなくて良くなったんだから、それで良しってことにしましょうよ。

「しかし、折角準備したんだから…本当は、皆に食べて欲しかったな」

と、ルリシヤはポツリと漏らした。

…でしょうね。

俺だって、折角なら…アシュトーリアさんを含め、幹部組の皆で今夜のパーティーを楽しみたかったですよ。

今頃、ルルシーの退院祝いパーティーを開いているところだったろうに。

何故こんなことになってしまったのやら…。

「…そうだな」

「…ここだけの話だが、先輩方はどう思う?」

ルリシヤが聞いてきた。

「どう思う、とは?」

犯人が誰か、って話か?アシュトーリアさんを心配してるか、って話か?

それとも…アシュトーリアさんに「万が一」のことが起きたときどうするのか、って話か?

あるいは、その全部をひっくるめてどう思うか、って話か。

「シュノ先輩がいる手前、あまり後ろ向きなことは言えなかったが…。もしこのまま、アシュトーリアさんの意識がもどらなかったらどうするか、という話だ」

あぁ、成程。そういう話ですか。 

確かに、シュノさんやアイズのいる手前…こんな話は出来ませんね。