帰る前に、まだやるべきことがある。
「…アリューシャ、ちょっと」
「あん?」
俺は、帰ろうとするアリューシャを小声で呼び止めた。
ちょっとアリューシャに、言っておかなければならないことがあって。
「頼みがあるんですけど、良いですか」
「おう…?そりゃアリューシャに出来ることなら何でもやるけど…。でもアリューシャに出来るのは、格好良く地平線の彼方から狙撃することだけだぞ?」
それが出来るだけで、充分凄いと思いますけどね。
それに、アリューシャに出来ることは狙撃だけではない。
「アイズのことですよ」
「アイ公?」
「えぇ。…普段と変わりないように見えますけど、きっと誰より、この状況に動揺しているはずです」
「…」
アリューシャも分かっているだろう?誰よりもアイズの傍に長くいたんだから。
アイズとアシュトーリアさんが、どれほど強い絆で結ばれているか。
ある意味で、実の親子よりずっと濃い関係だ。
自分の母親とも言える人が危篤状態で、落ち着いていられる者はいない。
本当は誰よりも、シュノさんよりも、周囲に喚き散らして感情を爆発させたいはずだ。
それなのに、彼にはそれが出来ない。
アシュトーリアさんに万一のことが起きたとき、彼女の後を継ぐ者として。
次期首領である自分が狼狽えたら、組織全体が揺れ動いてしまうから。
そして、それを好機と見た敵対組織に付け入られる隙を作ってしまうから。
誰よりも悲しみを露わにしたい…だからこそ、誰よりも冷静でいなければならないのだ。
残酷な話だ。
だからアイズは、間違っても弱気になったりしない。
だけど…それはつまり、自分の感情に嘘を付くということだ。
本当は辛いのに、辛くない振りをしなければならないということだ。
そんなアイズの胸の内を、誰が慰めてあげられるだろう。
俺では駄目だ。ルルシーでもシュノさんでも、ルリシヤやルーチェスでも無理。
それが出来るのは、誰よりもアイズの傍にいたアリューシャだけ。
アリューシャだけなのだ。
だから俺はせめて、アリューシャに託す。
「アイズのこと、支えてあげてください。頼まれてくれますか」
「そりゃあ、お前…。アリューシャが支えられるならいくらでも支えるけど…。それはアリューシャで良いのか?」
「アリューシャだから良いんですよ」
あなたは自分が思ってるよりずっと、アイズの心の支えになっていることを自覚するべきですね。
「アイズを一人にしないであげてください。彼を支えてあげてください。…アリューシャにしか出来ないことなんです」
「…よし来た、任せろ」
アリューシャはどんと胸を張った。
「本当にアリューシャで良いのか分かんねぇけど…。任されたからには全力で頑張るぜ!」
と、頼もしく言えるところはアリューシャの長所である。
あなたの長所は狙撃だけだと、自分では思ってるのかもしれませんが。
他にもアリューシャの良いところって、たくさんあるんですよ。
「…アリューシャ、ちょっと」
「あん?」
俺は、帰ろうとするアリューシャを小声で呼び止めた。
ちょっとアリューシャに、言っておかなければならないことがあって。
「頼みがあるんですけど、良いですか」
「おう…?そりゃアリューシャに出来ることなら何でもやるけど…。でもアリューシャに出来るのは、格好良く地平線の彼方から狙撃することだけだぞ?」
それが出来るだけで、充分凄いと思いますけどね。
それに、アリューシャに出来ることは狙撃だけではない。
「アイズのことですよ」
「アイ公?」
「えぇ。…普段と変わりないように見えますけど、きっと誰より、この状況に動揺しているはずです」
「…」
アリューシャも分かっているだろう?誰よりもアイズの傍に長くいたんだから。
アイズとアシュトーリアさんが、どれほど強い絆で結ばれているか。
ある意味で、実の親子よりずっと濃い関係だ。
自分の母親とも言える人が危篤状態で、落ち着いていられる者はいない。
本当は誰よりも、シュノさんよりも、周囲に喚き散らして感情を爆発させたいはずだ。
それなのに、彼にはそれが出来ない。
アシュトーリアさんに万一のことが起きたとき、彼女の後を継ぐ者として。
次期首領である自分が狼狽えたら、組織全体が揺れ動いてしまうから。
そして、それを好機と見た敵対組織に付け入られる隙を作ってしまうから。
誰よりも悲しみを露わにしたい…だからこそ、誰よりも冷静でいなければならないのだ。
残酷な話だ。
だからアイズは、間違っても弱気になったりしない。
だけど…それはつまり、自分の感情に嘘を付くということだ。
本当は辛いのに、辛くない振りをしなければならないということだ。
そんなアイズの胸の内を、誰が慰めてあげられるだろう。
俺では駄目だ。ルルシーでもシュノさんでも、ルリシヤやルーチェスでも無理。
それが出来るのは、誰よりもアイズの傍にいたアリューシャだけ。
アリューシャだけなのだ。
だから俺はせめて、アリューシャに託す。
「アイズのこと、支えてあげてください。頼まれてくれますか」
「そりゃあ、お前…。アリューシャが支えられるならいくらでも支えるけど…。それはアリューシャで良いのか?」
「アリューシャだから良いんですよ」
あなたは自分が思ってるよりずっと、アイズの心の支えになっていることを自覚するべきですね。
「アイズを一人にしないであげてください。彼を支えてあげてください。…アリューシャにしか出来ないことなんです」
「…よし来た、任せろ」
アリューシャはどんと胸を張った。
「本当にアリューシャで良いのか分かんねぇけど…。任されたからには全力で頑張るぜ!」
と、頼もしく言えるところはアリューシャの長所である。
あなたの長所は狙撃だけだと、自分では思ってるのかもしれませんが。
他にもアリューシャの良いところって、たくさんあるんですよ。


