The previous night of the world revolution7~P.D.~

こうなっては、最早パーティーどころではない。

組織の頭目にもしものことがあれば、『青薔薇連合会』の根幹が揺らぐことにもなりかねないのだ。

俺達はすぐさま、今朝までルルシーが入院していた病院に向かった。

出来ることなら、アシュトーリアさんの無事な姿を見て安心したいところだったが…。

そうは問屋が卸さない、と言ったところか。

アシュトーリアさんは今手術室の中で、おまけに意識不明のままだそうだ。

「…そんな…」

この知らせを聞いて、最も動揺したのがシュノさんだった。

ぶるぶると震えて、再び膝をつきそうになるのを…ルリシヤがそっと支えてあげていた。

…これは宜しくないですね。

「良いですね、分かってるとは思いますけど、必ず助けるんですよ」

俺は、アシュトーリアさんの容態を知らせに来た医療スタッフに向けて、殺意をあらわに脅しつけた。

殺気を向けられた気の毒な医療スタッフは、青ざめながら必死に頷いていた。

…が。

脅してもすかしても、人の命をどうにかすることは出来ない。

失われるものはどうやっても失われる。

医学の力で、全ての人間の命が救えるなら、葬儀屋は今頃火の車でしょうよ。

そんなことは俺にも分かっている。

だが、万が一にも医療スタッフの力不足で、アシュトーリアさんの命が失われてはならない。

何が何でも彼女の命を救ってもらう。そうしてもらわなければ困る。

「それから、患者が『彼女』であることは、決して漏らさないように」

「は、はい」

…勿論、アシュトーリアさんの命が第一だ。

個人的にも、彼女には様々な恩がある。それに…俺の大切な、仲間でもある。

帝国騎士団を追放され、行き場を失っていた俺を受け入れてくれたのは、他でもない彼女だ。

『青薔薇連合会』において、アシュトーリアさんの広い懐に助けられた者は腐るほどいる。

俺もその一人である。

だから死んで欲しくはない。『青薔薇連合会』には、アシュトーリアさんが必要だ。

それに…彼女に何かあれば、シュノさんを筆頭に、多くの仲間達が悲しむことになる。

それは俺だって望まない。

…でも。

俺達は『青薔薇連合会』。マフィアなのだ。

いつ何時、何者かに命を狙われてもおかしくはない。

故に、覚悟だけはしている。

少なくとも俺は、そのつもりだった。

…冷たいと思われるかもしれない。まだ死んでもいないのに、最悪のことを考えるなんて。

俺だって…このようなことは考えたくない。考えたくないが…。

これでも『青薔薇連合会』の幹部の端くれとして、己の責務くらいは心得ている。

万一のことはある。いつだって、運命は人の都合を考えてはくれないものだから。

だからこそ、起こってならないその「万が一」が起きたときのことを想定しなければはらない。

…最も厄介なのは、アシュトーリアさんが亡くなることそのものではない。

『青薔薇連合会』首領、アシュトーリア・ヴァルレンシーの身に「万一のことが起きた」という事実を。

『青薔薇連合会』以外の全ての組織、全ての人々に知られることである。

だからこそ俺は、まず真っ先に医療スタッフ達の口を閉じさせたのだ。