「俺の耳には聞かされてないが、お前は聞いてるんじゃないのか?」

「…」

…えぇ、その通りですよルルシー。

ルルシーに伝えなかっただけで、俺のもとには逐一連絡が来てましたよ。

ルルシーに心配をかけないように、通話ではなくメールによる連絡だった。

病み上がりのルルシーに、心配させるようなことを言って気分を悪くさせたくはないけど…。

…仕方ないか。

「…そうですね。俺のもとには連絡が来てましたよ」

「やっぱり」

「ルルシーを心配させたくなかったんですよ」

気持ち、分かってくれるでしょう?

それでなくても、ルルシーは元々心配性な性格なんだから…。

「そりゃありがとうな。でも、もう退院したから大丈夫だ」

良いからさっさと教えろ、って?

仲間外れはもう御免か。分かりましたよ。

じゃあ、恐らくルルシーが一番気になっていることから教えよう。

「あのとき、帝国自警団本部でルルシーを襲ったならず者の正体ですけど…」

「突き止めたのか?」

「いいえ、今のところは何も」

非常に残念である。

正体が分かれば、すぐにでも復讐しに行ってやったんだが。

ルルシーは眉をひそめることもなく、非常に冷静であった。

「そうだろうと思ったよ。犯人が分かってたら、ルレイアがあんなに落ち着いてるはずがないし」

だ、そうです。

さすがルルシー。俺のことよく分かってますね。

「ブロテは何て?」

「さぁ。俺のもとに直接連絡してきてる訳じゃないので…。アイズ曰く、『不甲斐ないが、いくら調べても分からない』を連呼してるみたいですね」

無能な連中だよ。

「もしかして、ブロテは犯人をもう掴んでるんじゃないのか?」

と、ルルシー。

「はい?」

「でもそれをお前に教えたら、お前が突撃してくるって分かってるから、敢えて知らない振りして黙ってるだけで」

「…あー…」

それはあるかもしれませんね。

ブロテとしては、これ以上俺と…『青薔薇連合会』と無用に事を構えたくないだろうし。

俺に暴走されたら困るから、敢えて犯人を庇ってるのかも。

「失礼しちゃいますよね。まるで俺を考えなしの暴走機関車みたいに…」

「違うのか?」

ちょっとルルシー?俺を何だと思ってます?

聞かなかったことにしよう。

「いずれにしても…ブロテに口を割らせることは出来ないだろうから、犯人の行方は分からないな」

ブロテがしらばっくれているにせよ、本当に犯人が分からないだけにせよ。

あのとき、帝国自警団本部でルルシーを襲ったならず者。その正体を、俺達で探すことは出来ない。

非常に口惜しい限りだ。

そして…。

「それで、『M.T.S社』のリーダーと幹部達は?あいつらの行方は分かったか?」

「…非常に残念ながら、まだです」

折角晴れ晴れと退院したルルシーに、一つも朗報を聞かせてあげられない。

誠に不甲斐ないばかりですよ。