―――――――…ルルシーの脚の怪我が無事に癒え。

俺はその日、ルルシーと共に病院を出た。

「やれやれ…。ようやく自由に動けるよ」

と、心底ホッとしたようなルルシーであった。

「俺は楽しかったですよ。ルルシーと四六時中一緒に過ごせて」

「そうかい」

色々と「お世話」もさせてもらったしな。

まぁ、大半はルルシーが拒否したので、あんまりやらせてはもらえなかったけど。

でも…こんなときでも、ルルシーと一緒にいられて楽しかった。

さて。

「アシュトーリアさんは、すぐに自宅に帰って良いと言ってましたけど…。どうします?」

「勿論、『青薔薇連合会』本部に行くに決まってるだろう?」

そう言うと思いました。

やっと退院したんだから、真っ直ぐ自宅に帰って、シャバの自由を満喫すれば良いものを。

自由になった途端、真っ先に考えるのは仕事のことなんですね。

ルルシーらしいと言えばらしいけど、ワーカーホリック気味であなたのことが心配ですよ。

「…ルレイア、お前何か聞いてるんじゃないのか」

しかも、ルルシーは俺にそう聞いてきた。

ほう。ルルシーも気づいてましたか。

そうでしょうね。あなたなら。

「何かって、何をです?」

「しらばっくれるなよ…。俺に気を遣って、言わなかったんだろ?皆して…」

「…」

その通りだ。

俺も黙っていたし、お見舞いに来たアイズも、アリューシャも、シュノさんも。

ルヴィアさんも、ルリシヤもルーチェスも、何も言わなかった。

傷が癒えるまでベッドから動けないルルシーに、余計な情報を伝えるべきではないと判断したからだ。

ルルシーにはあくまで、何も心配せずに傷を癒やすことだけ考えて欲しい。

そう思ったからこそ、敢えて皆…明るい話題だけを提供して、悪いことは何も言わなかった。

ましてや。

未だ逃走中の『M.T.S社』のリーダーと幹部数名の行方とか。

ルルシーを怪我させた帝国自警団員が何者かとか。

そういう、聞いただけで頭の痛くなりそうなことは…ルルシーには伏せていた。

退院するまでは何も言うまいと、皆で口裏を合わせていたのだ。

でも、ルルシーにはお見通しだったようだな。

まぁ…気になりますよね、普通は。

ルルシーもルルシーで、皆が気を遣ってくれていることを察して。

敢えて自分から、「あの件はどうなってる?」と尋ねないようにしていたのだろう。

お互い気を遣い合っていた訳だ。

だって、仕方ないじゃないですか。

本当のところをルルシーに話したら、ルルシーの退院は、あと一週間は先延ばしになっていただろうから。